INTERVIEW
2026/04/24

土の人と風の人が共に宿場町の価値を再読する。
「コ・リサーチプロジェクト」が目指すもの

PROFILE

Local Research Lab 中津川

岐阜県中津川市

地域資源の再読から、まちと人の関係性を再構成していく地域デザインプログラム「Local Research Lab 中津川」。

空白の1年を経て、3つの「点」が繋がるまで

路地裏、歴史が残る空き家、宿場町ならではの空気感…。
言語化しきれない宿場町の価値を拾い上げたい。
 

そんな想いから、行政(中津川市)、鉄道インフラ(JR東海)、デザイン(KESIKI)という 異なるバックグラウンドと専門性を持つ3者が立ち上げたのが、「Local Research Lab in 中津川」(以下、LRL)です。
 

3者の出会いのきっかけ、土の人(地元住民)と風の人(外部人材)が共に街の価値を「再読する」という「コ・リサーチ」を中心に据えたプロジェクトが生まれた背景、そして探索の先に目指す、宿場町とプロジェクトの未来とは。


2026年度も皆さんとリサーチ活動を共にするLocal Research Lab。ラボメンバーの3者の対談から紐解いていきます。


【Member】
・大山 徹 氏: 中津川市リニア都市政策部都市計画課 /Local Research Lab in 中津川 担当
・吉澤 克哉 氏 : 東海旅客鉄道株式会社 事業推進本部 係長 / conomichiプロデューサー
・牛丸 維人 氏: 株式会社 KESIKI ディレクター / Local Research Lab リサーチディレクター


空白の1年を経て、3つの「点」が繋がるまで

── LRL立ち上げの経緯と、チーム結成について教えてください。

吉澤: 出会いは2022年の秋頃です。JR東海グループの新規事業「conomichi」の立ち上げで初めてこのエリアを訪れた際、「面白い人がいる」と紹介されたのが大山さんでした。

大山 徹(中津川市リニア都市政策部都市計画課 主査) 民間企業を経て市役所にUターン転職。市役所にいながら組織を一歩飛び出し,民間と繋がり官民連携の仕掛け役となる「出島公務員」を目指し活動。官民連携による公共空間活用事業「MOTTO×JIMOTO」など,中津川の市街地再生に取り組む。

大山: 「案内してほしい」と言われて同席したのが最初でしたね。ただ、そこで吉澤さんが面白がったのは、いわゆる観光地ではなく、路地裏や歴史の痕跡が残る空き家でした。

吉澤: あの中津川の息遣いを感じるような路地裏体験は衝撃的でしたね。直感的に「この人と、この街と一緒に何かやりたい」と思いました。ただ、タイミングが合わず、1年間の空白期間ができてしまったんです。

吉澤 克哉(東海旅客鉄道株式会社 事業推進本部 係長 / conomichiプロデューサー) 共創型ローカルメディア「conomichi(コノミチ)」プロデューサー・事業責任者。「心ひかれるストーリーで、地域と訪れる人をつなぐ」をミッションに、3人の有志で始めたWGから同事業を立ち上げ。「Local Research Lab」や「里山LIFEアカデミー」など、累計30地域で地域共創プロジェクトを展開している。「JR東海MARKET」立ち上げ等の新規事業創出で培った企画・実行力を活かして地域に深く伴走し、「風の人」と「土の人」が共に地域づくりの担い手となる「共創人口」の創出に取り組む。環境省「第13回グッドライフアワード」実行委員会特別賞受賞。

大山: 正直、当時はまだ吉澤さんが描くプロジェクトへの解像度が低く、イメージしきれていませんでした。でもその後、吉澤さんが「conomichi」で展開する別のプロジェクトを見て、「あ、こういう動きを中津川でもやりたいのか」と腑に落ち、話を進めていきました。

吉澤: そこで市のキーマンである大山さんとも想いが合致し、いよいよプログラムをつくる段階へ。その時、どうしても入ってほしかったのがKESIKIの牛丸さんです。「街の文脈(コンテクスト)」を捉えるには、デザインとリサーチの専門家が不可欠でした。

牛丸 維人 氏(株式会社 KESIKI ディレクター / Local Research Lab リサーチディレクター) 岐阜県飛騨高山生まれ。人類学、デザイン、映像、ビジネスを越境したダイナミックなリサーチやプロジェクト推進を得意とする。一橋大学社会学部卒業後、リクルートにてメディア・SaaSプロダクトの事業戦略立案・推進に従事。その後、オーフス大学(デンマーク)に進学し映像人類学の修士号を取得。在学中にはフィリピン北部での長期フィールドワークを実施し、視覚障害当事者によるケア実践と社会運動に関するエスノグラフィ執筆、民族誌映画制作を経験。KESIKIでは地域から中央省庁の政策コンセプト策定から企業のカルチャー変革、ナラティブ策定、事業創出まで多様なプロジェクトをリードする。Local Reserch Lab 中津川のリサーチディレクターのほか、武蔵野美術大学 VALUE CREATION PROGRAMではレクチャーを担当する。

牛丸: 連絡をもらった時、吉澤さんの「リサーチを中心に置きたい」という強い思いに惹かれました。通常、地域でのリサーチプログラムやブランディングは数回の簡単な視察で終わりがちです。しかし LRLは、フィールドワークでじっくり街を歩き、観察することに重きを置く。様々な人を巻き込んで何度も街を訪れる。リサーチを最も重要なアクションに位置付け、長期的な「探求」を許容するプロジェクトは極めて稀だと感じました。

吉澤: 言語化しきれない中津川の「空気感」を拾い上げてくれる気がして。こうして、行政、鉄道インフラ、デザインという異なる立場の3人が揃い、LRLは始動しました。


「体験」ではなく「探求」を。LRLが大切にするもの

前回のフィールドワークの様子

── 運営として大切にしている軸はどこにありますか?

大山: 「外部との接続」と「混ざり合い」です。地理的な条件もあり、外への接続が弱いと感じている中津川に、JR東海さんとの連携で「風の人」を呼び込み、地域の「土の人」と混ぜ合わせる。この「異質な視点の混ざり合い」こそが、街を再読するためには不可欠なんだとこの1年で再確認しました。

吉澤: こだわったのは、地域のこれからを考える「上流」のプロセスから参加者に関わってもらうことです。何が課題で、何が価値なのか。予定調和な「答え」を用意するのではなく、参加者が自ら問いを見つけるための「関わりしろ」をデザインすることを常に意識していました。

牛丸: 大山さんが当初「参加者に対して、いきなり『自由にフィールドワークして』と放り出して動けるだろうか?」と心配されていたのを覚えています。

大山: 言いましたね(笑)。ハードルが高すぎて足が止まってしまうんじゃないかと。でも、蓋を開けてみたら逆でした。

牛丸: 実際にフィールドに出たラボメンバーたちは、観光名所ではなく、道端の石碑や市民の日常的な会話など、想像もしない「街のテクスチャ」や多様な「兆し」を持ち帰ってきました。実際に街を歩き、音を聞き、手で触れる。「身体性」を伴うリサーチだからこそ、自分だけの発見があるんです。

吉澤: 1人で歩くのと、LRLのメンバーで歩くのとでは、見えてくる情報の深さが違う。互いの視点が補助線となって、街の解像度が上がっていく。まさに「コ・フィールドワーク」の面白さが前面に出たプログラムでした。

街に生まれた「熱量」と「お節介」の可能性

前回のワークショップの様子

── 2つのシーズンを終えて、街にはどのような変化を感じていますか?

大山: 街全体としてはまだ小さな動きかもしれませんが、参加者の中では確実に「熱量の爆発」が起きています。「自分はまだ動き出せていないけれど、あのチームを応援したい」というフォロワーも生まれ、潜在的にあった「何かやりたい」という想いに火がついている感覚があります。

牛丸: 今までは「探求」のフェーズでしたが、これからは「検証・プロトタイプ」のフェーズに入っていく予感があります。実際にプログラムから生まれたチームが既にアクションを起こし始めていたりと、そのアイデアが本当に街にインパクトを与えるのか、社会実装して検証し、改めて再読する段階に来ています。

大山: そこでキーワードになるのが「お節介」だと思います。地元には熱意ある人を応援したいと思っている方や企業がたくさんいるのに、エネルギーを向ける先が限られていた。そこに、LRLのラボメンバーのような熱量ある方たちが現れ、「放っておけないな」と思わせる「お節介され力」を発揮したことで、周りの大人が動き始めているんです。

吉澤: その「お節介の連鎖」こそ、まちの生命力なのかもしれません。これからは個人の熱量だけでなく、地域の企業や行政といった「組織」も巻き込み、ともにまちづくりを担う存在になれば、より持続的な動きになっていきそうです。

共創のその先へ。これからのチャレンジ

── 最後に、これからの展望を教えてください。

牛丸: 先ほども触れましたが、「検証型のリサーチ」を増やしたいです。アイデアを街の中で試験的に実装し、街の人の反応をまたリサーチする。アクションによって街がどう変化し、どう見えるようになるのか。あくまで「再読・リサーチ」をコアに据え、その視点の変化を楽しみ続ける場でありたいです。

大山: 僕は、この活動をもっと「可視化」したいですね。中津川で起きている化学反応を広く届け、新しい「風の人」が引き寄せられ、「土の人」と触れ合いながら新しいプロジェクトが生まれる、そんなサイクルをつくりたいですね。

吉澤: 最終的なゴールは、このプログラムの参加者が共通言語を持って街に散らばり、地域を動かす担い手になることです。中津川市が掲げる「つかう中津川※」のように、街を単なる居住空間ではなく、自分の人生を面白くするためのフィールドとして「使いこなす」人が増えてほしい。

── 風と土が混ざり合うことで、街はどう変わっていくのでしょうか。

吉澤: 個人の想いから始まった小さな熱が、組織を巻き込み、街全体を動かす大きなうねりになっていくと信じています。 異なる背景を持つ「風」と「土」が混ざり合うことは、時に摩擦も生みますが、それ以上のエネルギーを生み出す。そのエネルギーが街の価値を再発見し、新しい文化を耕していく未来を、このメンバーとなら描けると確信しています。

※「つかう中津川」:中津川市中心市街地まちづくりビジョンにおける将来像を実現するためのコンセプト。「住む」だけでなく、市民一人ひとりが街を舞台に活躍し、使いこなすことを目指す言葉。
 

地域だけでは、言葉にできない、中津川という歴史ある宿場町の価値を、あなたもラボメンバーとして、共に再読しませんか?
2026年度のラボメンバー募集は こちら から!

編集:北埜航太
conomichi編集ディレクター


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