INTERVIEW
2024/06/18

地域住民と移住者によるプロジェクトで想いをカタチに

PROFILE

Cafe Lumière(カフェ・ルミエ)

JR近江長岡駅

JR近江長岡駅待合室にオープンしたカフェ。オーガニックコーヒーをはじめとするドリンクや、ホットサンド、スイーツセット、地元のベーカリーとコラボしたパンなどを販売。

移住者の提言をきっかけに、地元有志で結成した「近江長岡大好き倶楽部」、米原市、JR東海がタイアップしてカフェ開業を実現。電車の乗降客をはじめ、カフェ目的で訪れたお客で賑わっています。今後はマルシェやワークショップなど、地域交流の場としても活用の幅を広げていく予定です。

何気ない“ひとこと”から始まったカフェ開業プロジェクト


 

2024年2月1日にJR近江長岡駅の待合室にオープンした『Cafe Lumière(カフェ・ルミエ)』。フランス語で「明かり」の名の通り、パリの街角をイメージした内観が待合室に明るさをもたらしています。今回はガランとしていた待合室に明かりが灯るまでの、1年9カ月にわたるストーリーをご紹介いたします。
 


近江長岡駅は日本百名山の一つにも数えられる伊吹山の登山ルートへ通ずる玄関口(※注)。シーズン中は登山客で賑わうほか、夏には駅前広場で盆踊りが行われるなど、地域の憩いの場としても親しまれてきました。かつては駅周辺に飲食店が点在し、待合室内にキヨスクもありましたが、人口減少などによって飲食店は姿を消し、キヨスクも閉店に。地域の皆さんは、乗降客から「どこかに食事をするところか、弁当を買えるところはありますか?」と聞かれても、「ありません」と答えるたびに、申し訳なさを感じていたといいます。
※2024年3月時点では登山道の大規模な崩落のため入山禁止
 


一方、近江長岡駅がある米原市では、市の空き家を活用した移住促進の取組により、県外からの移住者誘致に結果を出し始めています。豊かな自然に囲まれた生活と、新幹線を使えば大阪・京都・名古屋も通勤圏内という利便性に惹かれたIターン、Uターン移住者が増え、山城真理さんもそのうちの一人。彼女の「駅でおいしいコーヒーが飲める場所があれば・・・」というひとことから、駅の待合室にカフェを作るというプロジェクトが動き始めました。


自然豊かでアクセス至便な米原市


 

山城さんは大阪の中心部で仕事をする傍らポーセラーツの教室を経営しています。コロナ禍で教室の長期休業を余儀なくされた際、「これからの人生、どのように生きたいか?」と自問自答したそうです。その時に浮かんだのが自然豊かな環境で暮らすこと。大阪で仕事を続けながら、理想の生活を叶えられる場所を探した結果、米原市に移住先を決めました。
 


「新幹線を使えば大阪駅まで片道30分程度の所要時間で、前日までにネット予約をしておけば往復5,000円程度で通えます。米原市が万全の受け入れ体制を整えてくれたことや、都会へのアクセスが良いのに自然豊かな街並みが残っていること、水がキレイな地域という点も大きな決め手になりました!」と山城さん。長岡自治会内の空き家をリノベーションして移住し、地域の活動にも積極的に参加するように。地域住民と移住者による交流会の場で発したのが、先ほどの“ひとこと”でした。
 


地域住民と移住者の想いが一つに


 

地域住民と他の移住者の皆さんも「近江長岡駅内にカフェがあったらうれしい」と意見一致。長岡自治会長の吉川良幸さんが2022年に米原市に対して『待合室活用等の要望書』を提出し、シティセールス課の土川さんと坂さんに相談しました。
 

長岡自治会・米原市・JR東海等で待合室の利用について協議がスタートし、翌年に長岡自治会長の吉川さんと西山自治会長の奥田さん、万願寺自治会長の堀江さんが発起人となって『近江長岡大好き倶楽部』を立ち上げました。米原市から助成金の交付が受けられることが決まり、JR東海より待合室の一部を借り受けたカフェ開業が現実のものに。カフェ運営には山城さんと、地域おこし協力隊として愛知県から米原市に移住した石崎達郎さんとその妻の美和さんが携わることに決まりました。
 


助成金だけでは立ち上げ資金をまかなえないため、吉川さんは倶楽部メンバーや地元企業に、運営メンバーは長岡自治会内にある約400軒のお宅を訪問し、支援を依頼して回りました。併せてクラウドファンディングも立ち上げて支援を募り、ようやく目標の金額に到達。限られた資金内でやりくりするために、床は無償で提供してもらったタイルをDIY。窓辺の椅子は、地元有志から譲り受けたリユース品を活用。テーブルや作業台などは、地元の建築会社にオーダー家具を依頼。給排水工事なども地元業者にお願いするなど、地域の人々に様々な協力を得て店づくりは進んでいきました。そして、構想から約1年9カ月を経て、ようやく『カフェ・ルミエ』が完成。まさにみなさんの想いと努力の結晶です。

カフェで提供するコーヒーや食事にもとことんこだわり、コーヒーはおいしくて体に優しいオーガニックコーヒーをセレクト。名水百選にも選ばれた清らかな湧水で淹れ、お店のイメージカラーでもあるブルーの益子焼のカップ&ソーサーで提供します。



ホットサンドのベーコンには地元メーカーの「伊吹ハム」、カフェラテなどに使うミルクは「伊吹牛乳」を採用したほか、SNSでつながった地元ベーカリーのパンも販売するなど、地域とのつながりも大切にしています。
 


「協力メンバーを増やしながら、採算がとれる体制に持っていくことが第一目標。そして地元の農家さんが気軽に野菜を販売できるマルシェを開催したいですね」(山城さん/左上)
 

「ワークショップなどを通じて近江長岡の文化を伝えながら、市内外の方と交流ができたらいいですね」(石崎夫妻/右上)


「近江長岡という池に、カフェ・ルミエという石が投げ込まれたことで、活気という波紋が街全体に広がっていくことを願っています」(吉川さん/左下)
 

「私たちは今まで以上に米原市の魅力を外に向けて発信し、みなさんのように有言実行してくださる方をサポートしていきます」(土川さん・坂さん/右下)


コーヒーの芳醇な香りと窓から降り注ぐ柔らかい明かりに満たされた昼下がりの『カフェ・ルミエ』。リラックスした空気感も手伝って、みなさんの話は尽きることがありませんでした。今後はカフェというカテゴリーを超えて、さまざまな交流やイベントの舞台になりそうです。

(注記)

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