INTERVIEW
2024/11/07

地域住民とデジタル住民の協働でつくる新たな観光の姿

PROFILE

ねやねや天龍峡デジタル住民部

長野県飯田市

飯田市天龍峡地域にて、地域外に住みながら地域に関わる「天龍峡デジタル住民」を募り、地域住民とデジタル住民が協働することで、観光課題の解決を目指すプロジェクト。

「天下の名勝」と称される天龍峡。長野県飯田市に位置するこの地域は、息をのむような自然の美しさと迫力満点の渓谷景観が望める景観で知られ、古くから多くの観光客を魅了してきました。しかし、時代の変化とともに天龍峡の観光地としての在り方も転換期を迎えています。そこで立ち上がったのが、「ねやねや天龍峡デジタル住民部」(通称:ねやデジ)です。このプロジェクトでは、地域に観光に訪れるだけではなく、一緒に悩み考え実践してくれる新しい仲間である「天龍峡デジタル住民」を募ることで、地域住民とデジタル住民が協働し、観光課題の解決を目指していきます。今回の記事では、ねやデジの目的と展望について、創設メンバーの大平さん、鵜名山さん、松尾さん、湯澤さん、折山さんにお話を伺いました。

INDEX

  • ねやねや天龍峡デジタル住民部
  • 奇跡的な繋がりで生まれたプロジェクト
  • デジタル住民とともに新しい観光の在り方を定義する
 


ねやねや天龍峡デジタル住民部

ねやねや天龍峡デジタル住民部とは

天龍峡地域の関係人口拡大や観光事業の発展を目的として、デジタル住民施策を軸とした活動を行っているチームです。地域住民・UIターン・地域外メンバー・自治体職員など多様なメンバーで構成されています。



1.大平 雄司郎
株式会社Weblit 代表取締役。長野県飯田市出身。フィリピン・オーストラリアに2年間留学しながら、フロントエンドエンジニアとして活動。その後、大手広告代理店 制作会社にてwebディレクターを約2年経験。現在は、大手エンタメ会社にてWebディレクターとして、ECサイトの制作担当として活動。東京・飯田の2拠点生活中。

2.鵜名山 翔
株式会社Weblit取締役。東京都三鷹市出身。AWSを基盤としたシステムやアプリケーションを中心に、クラウドアーキテクトおよびDevOpsエンジニアとして経験。現在は東京と長野県飯田市の2拠点でWeb事業を展開中。育った場所だけでなく自分自身でふるさとと呼べる地を築くという人生設計をもとに天龍峡地域での活動を始めている。

3.松尾 智美
飯田市天龍峡出身。名古屋の大学を卒業後、愛知県内の企業で3年半勤務。2023年2月に飯田市へUターンし、天龍峡地域での起業を目指しつつ、地域活性化に向けたプロジェクトに携わっている。テンリュウ堂を拠点に、観光促進と関係人口の創出を推進中。幼少期から親しんだ土地に貢献しながら、地元に「自分のふるさと」として誇れる場所を築くことを目標に活動を展開している。

4.湯澤 英俊
長野県飯田市 結いターン移住定住推進課係長
長野県伊那市出身。大学卒業後、メーカー勤務を経て飯田市役所へ入庁。企業誘致や大学連携、シティプロモーション等の業務に従事し、現職。人とのつながりによる「結い」を大切にしながら、持続的で柔軟な暮らし方や働き方ができる地域づくりと公民連携による地域課題解決型講座を事業化して関係人口の創出に取り組んでいる。

5.折山 尚美
合同会社nom 代表社員。新潟県に生まれ南信州に移住。病院勤務ののち、ホリスティック医療「スリランカ政府認定アーユルヴェーダインストラクター、プロフェッショナルアドバイザーオブハーブを取得。予防薬としても活用される薬草や野草など使った旅館を経営。 「土に還る」を事業の主体にし、地域資源の新しい活用提案や空き家・文化財の活用など、関係人口と地域を繋げ役を担っている 。合言葉は「ごはんだよー」。地域コミュニティや豊かさや幸福感を食事によって表現している。その中から生まれる様々なアイデアで100年先まで描ける事業を展開する。
 


奇跡的な繋がりで生まれたプロジェクト

-どのような経緯でこのプロジェクトは始まったのですか?


湯澤:きっかけはね、大平君がいきなり市役所の僕の課に電話をくれて。


大平:鵜名山さんと2人で独立して飯田で事業を始めたのですが、地元とはいえあまり繋がりもなくて。だから最初はとにかく沢山の人に会って話を聞いてもらってました。その時にどこへ行っても湯澤さんの名前が挙がってました。だからまずは話してみようと思って。


-すごい行動力ですね。湯澤さんは話を聞いてどうだったのですか?


湯澤:話を聞いた時に、面白いことを考える若者がいるんだなと思って。逆に他では話を聞いてもらえないだろうなとも思ったんです(笑)。だけど、天龍峡でならできるかもしれないと思って、折山さんや松尾さんに繋ぎました。今思うと、奇跡的な繋がりでこのプロジェクトが立ち上がったと思います。


-地域側は初めてこの話を聞いた時どう思いましたか?


折山:実は、紹介される前から熱心に活動している人がいるという噂は聞いてました。だから話をちゃんと聞いてみようと思って。それに、大平君に会う前から、ただのお金だけじゃない、人の想いだったり、つながりのような見えないものをどうやって可視化できるかずっと考えてました。だからデジタル住民のことを聞いた時に、スッキリしたんですよね。


-デジタル住民の仕組みは、人と人とのつながりが可視化できると。


折山:はい。だからこそ、この話は天龍峡を担う次の世代にこそ聞いて欲しいと思って、(松尾)智美ちゃんを誘ったんです。
 


デジタル住民とともに新しい観光の在り方を定義する

-5人それぞれがこのプロジェクトを通じて目指している姿についてもお話いただけますか?

折山:デジタル住民と共に地域を活性化するこの取り組みは、日本だけじゃない、世界中で起きている人口減少問題に対する1つの事例になると思っているんです。こうした目に見えないものを大事にする思想は、日本発だからこそできる。私はそれを世界に対して示していきたいと思っています。

湯澤:僕は市役所でずっと関係人口創出をやってきたんです。だから、観光地であった天龍峡が観光だけでなく、関係性によって人が訪れ続ける、そんな地域になったら良いと思っています。その関係性というのは、例えば、もてなされる側として来るのではなく、もてなす側にもなるみたいな。そういった関係性が混然一体としたような地域、社会に身を置くことで、新しい価値が生まれると思うので、そこを僕は広げていきたいなと思っています。

鵜名山:僕は他のメンバーとはちょっと違っていて、ルーツが天龍峡にはないんです。でもこの地域と関わっていると、外から来たっていう感じがほとんどしません。イベントに参加してみんなと一緒に盛り上げたりすると、自然と「仲間」って感じがして、それが嬉しくて。その経験が、またここに来たい、訪れたいって気持ちにつながっているので、これを広めていきたいと思っています。きっと、僕みたいに「どんな場所なんだろう?」とか「故郷が欲しいな」って思ってる人が他にもたくさんいると思うんです。そういう人たちに向けて、僕の体験を通じて「こんなことができるんだよ」って発信していきたいですね。そしてそれが、天龍峡から始まり、最終的には全国に広げていける事例になったら面白いと思っています。

大平:僕は二つの軸で考えています。まず一つ目は、もともとこのプロジェクトの基盤となっているブロックチェーン技術に興味があって、「これで何ができるんだろう?」って思いながら始めました。それで、天龍峡で成功事例を作って、「こういうことができるんだよ」っていう先駆者になりたいというのが、個人的な興味の部分です。二つ目は、人の幸福度って、コミュニティに属していることや、そこでの人間関係が良好であることにかなり影響されていると思うんです。昔の日本の村みたいに、物理的な距離じゃなくて、デジタル住民のような仕組みを通じて精神的な距離感で新しい形の村ができたら面白いと思っています。そういうコミュニティができたら、幸福度も上がるんじゃないかと思っていて、天龍峡にデジタル住民として関わることで、少しでもその人たちの人生にプラスの影響が与えられたらいいなと思っています。さらに、その影響を受けた人たちが地域に恩返しをして、地域全体が相乗効果で良くなっていくというのが理想的かなと考えています。

松尾:私が最近思うのは、同世代や親世代の中で、地域の活動や自治体に関わりたがらない人が増えてるということです。地域にあまり関心がなくて、自分の生活のことしか見てない人が多い気がします。でも、デジタル住民として外から来る人の話が広がって地域が変わっていく様子を見たら、「面白そう、入りたい」って思う人も出てくるんじゃないかと思います。そうやって、今まで地域に興味がなかった人たちも巻き込めたら、それは本当にすごいことだと思います。そうなったら、楽しいことをやっているときに「自分たちも混ぜてほしい!」って感じになるのかなって思います。もちろん、こちらから声をかけるのも大事だけど、地域の人たちから「自分たちも参加させてくれ!」って言ってくれるようになったら、それが理想だなと思います。外から来る人たちの影響で、地域の人たちも「やっぱり自分たちも参加したい」と思うような未来があったらいいなと思います。今は多くの人が、自分の生活のことしか考えていなくて、どうして地域が成り立っているのかをあまり考えていない気がします。そういうことを考えるきっかけになって、地域にもっと関わりたいと思う人が増えてくれたらいいですね。

飯田市天龍峡で生まれた「ねやねや天龍峡デジタル住民部」は、世界中の観光地が抱えている課題に一筋の光を見出そうとしています。これからねやねや天龍峡デジタル住民部は「新しい観光会議」を開催進めていきます。ぜひ一緒に新しい観光の在り方を考えていきたいです。

編集後記

飯田市天龍峡で生まれた「ねやねや天龍峡デジタル住民部」は、世界中の観光地が抱えている課題に一筋の光を見出そうとしています。conomichiでは、ねやねや天龍峡デジタル住民部のコラボレーション企画として「新しい関係人口会議」を開催します。新しい観光の在り方をつくるムーブメントにまずは参加してみませんか?

執筆・編集

クリプトヴィレッジ
本間英規

 


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