
【愛知発酵食文化セミナーVol.1】知多・西三河の発酵食と観光の可能性
- 日 程
- 11/7
- 場 所
- 愛知県岡崎市
INDEX
- 2026年アジアパラ競技大会に向けて愛知の発酵文化を世界へ
- モノではなくコトで伝えられるのが観光の魅力
- 「世界中の人に酒蔵でキラキラお酒を酌み交わしてもらいたい。」-澤田酒造の取り組み
- 生産者、メーカー、料理人が一丸となり、日本の味覚に影響を与えた南三河の食文化を国内外へ発信
- 参加者と登壇者のキャッチボールが生まれたパネルディスカッション
2024年5月に愛知県「発酵食文化」振興協議会が設立され、2026年のアジアパラ競技大会に向けて愛知県の発酵文化を伝えようと盛り上がりを見せている愛知県。
各地で発酵関係のイベントやセミナーが開催される中、11月7日に岡崎市内のホテルで「第1回知多・西三河の発酵食と観光の可能性を探るセミナー」が開催されました(主催:中部運輸局)。
醸造蔵、観光協会、交通機関、飲食店、料理教室主宰者など、多岐にわたる分野の方々総勢70名ほどが出席されました。
2026年アジアパラ競技大会に向けて愛知の発酵文化を世界へ

左:中部運輸局観光部国際観光課 次長住田嘉治さん 右:中部運輸局観光部国際観光課 清水麻里さん
「2024年5月に愛知県発酵食文化振興協議会が設立され、県を挙げて国内外に愛知県の発酵の魅力を発信しようという取り組みが各所で始まっています。今回の全3回のセミナーでは、2026年に開催されるアジアパラ競技大会に向けてアジア圏からのインバウンド旅行者の受け入れ態勢を整えるため、受け入れ先となる方々の機運を高めていくことを目的としています。」
今回の中部運輸局の発酵食文化を活用したインバウンド促進及び受入環境整備実証事業では、①インバウンドに関する様々な調査、②機運醸成に係るセミナーの開催、③モニターツアーの実施という3点を軸として進めていきます。今回開催されたセミナーは「②機運醸成」の一環。このセミナーを皮きりに、第2回(12/11)、第3回(1/20)でさらにインバウンド受け入れの具体案を参加者と共に探っていきます。
モノではなくコトで伝えられるのが観光の魅力
さて、ここからがセミナー本番。まずは、愛知の酒と発酵をコンテンツにしたガイド育成事業を手掛けるStay Aichi共同代表の吉田さき子さんから「愛知の発酵と観光の可能性」についてお話いただきました。
Stay Aichi(ステイあいち)共同代表 吉田さき子 さん

販店に約30年勤め日本酒、ワイン、他の酒類、全国の食品類のバイヤーを経験。店頭での接客や販売手法が書籍に取り上げられる。病をきっかけに発酵に目覚め、探求と情報発信のため起業後、独立。Stay Aichiとして酒と発酵食をコンテンツにしたガイド育成事業をスタート。愛知県発酵食文化振興協議会有識者/国際唎酒師(英語) https://www.stayaichi.jp /
約30年酒販店業務に携わり、愛知の素晴らしい発酵食文化を伝えるためにできることを模索し続けてきた吉田さん。観光にその糸口を見つけ「愛知×発酵×観光」の意義を伝え続けてきました。吉田さんは「対面で接点が増え、人との関わりが増えるほど、値段ではなく目の前にある価値とともに購入します。そしてそれを生みだせる一つの手段が『観光』なんです」と、観光業と消費の関係から話がスタート。店頭に並んでいるだけでは買わないけれど、蔵に行ったりマルシェで見つけて人と交流すると、つい買いたくなる、あの気持ちですよね。 実際に蔵を巡り、見て・触れて・味わって・香りを感じることで商品が単なるモノではなく思い出というコトに変換されるのが旅(観光)の醍醐味でもあります。
吉田さんの話では、訪日外国人の数や観光収益の具体的な数値がありつつも、人間の脳の構造と購買意欲や行動原理など、様々な切り口から観光資源としての愛知の発酵についてお話いただきました。
「世界中の人に酒蔵でキラキラお酒を酌み交わしてもらいたい。」-澤田酒造の取り組み
続いて、実際にインバウンドの受け入れに関して準備を進めている常滑市の酒蔵「澤田酒造」さんの取り組み事例紹介。
澤田酒造株式会社代表取締役 澤田薫 さん

1848年創業。愛知県常滑市で170年以上の歴史を持つ酒蔵の6代目。代表銘柄「白老」を中心に、伝統的な酒造りを守りつつ、地元の酒米「若水」などを用いた地産地消を推進。経営理念「五方よし」を掲げ、地域貢献と持続可能な酒造りに取り組む。コロナ禍や火災などの困難を乗り越え、伝統と革新の両立を図る。 https://hakurou.com/
澤田酒造は創業1848年。常滑市で176年に渡り日本酒を造りつづけている酒蔵です。中部国際空港から車で15~20分ほどの距離にあり、空港に降り立った旅行者には便利な立地であることが一つの強みであると言う澤田さん。
「澤田酒造では2km先にある山からこんこんと出る湧水を蔵まで引き入れています。武豊層と東海層群と呼ばれる地層が豊かな水を育み、常滑焼の原料として利用され、かつてはその焼物で酒が運ばれていきました。こうした土地と蔵との関わりを伝えることは国内外どちらの方にも喜んでいただけます。」
澤田酒造さんでは40年ほど前から一般の人の酒蔵見学を始めています。酒造りをしない時期には落語の会や講演会、マルシェなどを開催したり、ガストロノミーを目的とした海外からの発酵ツーリズムを受け入れたりするなど、積極的に国内外の方を迎え入れてきました。

写真:澤田社長の幼馴染が経営するフレンチレストラン「ルクリューズ」のシェフを呼び知多半島のガストロノミーツアーを開催。澤田酒造の酒粕を食べて育った地元の牛や豚のお肉や卵農家、魚屋などが集まり、旅行者と生産者が交流を深めた。
一方で、これまでは酒蔵見学を「日本酒という商品を販売するためのサービスの一環」として捉え無料で受け入れてきたところを、「より日本酒を楽しむための体験の販売」と捉え直し、数年前から準備をしてきました。2024年には飲食スペースを整え、酒蔵見学を試飲付きの有料見学に切り替えました。さらにプレミアムな酒蔵体験として始めたのが、常滑焼の作家4名による酒器で日本酒を飲み比べることができるプラン。プロのテイスターに監修を依頼し、形や薄さ、お酒が口に入るまでの流れ方までこだわりぬいた酒器だそうです。酒蔵見学は日本語と英語の両方で対応できるよう体制を整えています。
他にも、補助金などを利用してトイレや直売所を整備したり、角打ちスペースを設けるなど蔵に訪れた方が快適で楽しく過ごせるよう施設を進化させています。蔵の二階には展示スペースを設け、創業時からの記録や試験場があった時の顕微鏡を設置するなどして、澤田酒造だけではなく知多半島全体の酒造りについても知ることができるように整えてきました。
また、地元への貢献として整えたのが仕込み水を自由に汲むことができる水汲み場。毎年小さな鰻が遡上するほどきれいな水です。江戸時代から24時間止まることなく流れ続けている水を地域に開放し、山と海の豊かさを感じてもらうと共に防災の備蓄水(ローリングストック)として活用してもらうことを始めています。

写真:薫酒・爽酒・醇酒・熟酒の4つの日本酒のタイプに合わせて作られた酒器「ささらけ」。すべて常滑焼の作家による作品で、地元とのつながりを感じることができる。
そもそも、澤田酒造が海外の方の受け入れをしようと思ったのは、2019年に中部運輸局が主催したセミナーがきっかけ。セミナーからのご縁で多くの人に助言をもらいながら海外向けのコンテンツ作りに着手したそうです。その甲斐があり澤田酒造では少しずつ、海外特にアジア圏からの来訪者が増えてきました。
海外の方との接点が増える中、澤田さんは
「愛知県には発酵食と観光の観点からも多くの事業者と連携を図り、地域の経済が発展していく可能性がたくさん眠っていると思います。私たちは小さな事業者ではありますが、170年の歴史と共に日本の食文化を代表する酒造りを続けていきたいと思っています。
私が目指すのは、酒蔵に国内外からたくさん人が集まり、みんなが笑顔でお酒を酌み交わしてキラキラ喜んでいる、そんなイメージです。そしてそれは世の中が平和でないと実現しません。なので、私たちは日本酒の文化を通して日本の豊かさを再認識し、平和でみんなが美味しいお酒を呑んで喜べるようなことを追求していきたいと思っています。」
と発表を締めくくりました。

生産者、メーカー、料理人が一丸となり、日本の味覚に影響を与えた南三河の食文化を国内外へ発信
続いての発表者は碧南市にある「小伴天はなれ 一灯」の料理長・長田勇久さん。実家である「小伴天」は、一色町が近いため鰻があり、店の隣にたまり醤油蔵、その隣にみりん蔵があったところから鰻屋として創業し、2024年で102年となる老舗です。そのはなれとして、知多・三河地方の豊かな生産者を照らす一つの灯となりたいと、「一灯」を構えています。
日本料理「一灯」店主 長田勇久 さん

「小伴天」代表取締役社長。東京の老舗名店「つきぢ田村」で修行後、「おもてなしの心と料理を通して、南三河の食文化を伝え、お客様と生産者様が交流し活性化していく、一つの灯りとなりたい」と2015年に「一灯」をオープン。地元愛知の新鮮な魚介や伝統野菜を活かし、発酵調味料を取り入れた料理が人気。平成30年度地産地消等優良活動表彰農林水産大臣賞受賞。「小伴天」 https://kobanten.jp/ 「一灯」 https://kobanten.jp/ittou/ (両店とも 2019 年東海地区ミシュランガイドに掲載。)
そんな中で生産者とのつながりから今年の6月に一般社団法人南三河食文化研究会を発足。行政区分として西三河・東三河という表現はありますが、南三河という区分はありません。南三河と名付けたには理由がありました。
「私の店がある碧南市は西三河に属しますが、海に面しているので海産物が豊富だったり味醂をはじめとする醸造文化が盛んだったりするので、食文化は海沿いの文化なんです。知多半島を含め、三河湾に面しているところは食文化が近いのでそれをまとめて南三河と(勝手に)呼んでいます。海側ではシラスやちりめんじゃこが獲れて、魚の佃煮を作るけれど、同じ西三河でも山の方に行くと五平餅やそばが食文化として根付いているので海側とは異なります。食材も使う調味料も変わってきますね。そうして見た時に、食品や発酵関係の友人と一緒に海側の発酵食文化を伝えていこうとして作ったのが(一社)南三河食文化研究会です。
日本人は甘じょっぱいものが好きですよね?それにも歴史的背景があって、知多半島から酢や味醂などが江戸に運ばれていった時に、三河の人も一緒に行ってるんですよ。彼らが好んで食べていたたまりと砂糖の甘じょっぱい味、つまりは南三河の食文化が江戸に広まり、全国各地に何らかの影響を与えたという話もあります。」

南三河食文化研究会には豆味噌蔵、 味醂蔵、白醤油蔵、日本酒蔵などの醸造家を始め、豆腐屋や麺屋、佃煮屋、料理人が所属していて、生産者~メーカー~料理と一連の流れが作れることが魅力のひとつ。今は団体として発足したばかりで実際に活動していくのはこれからとのことでしたが、今後一つの団体として行事に参加し、南三河の食文化を伝えていく予定だそうです。
まだ団体としての発足前ではあるものの、外国人シェフがツアーで東海エリアに訪れた時にも研究会メンバーが勢ぞろいでした。シェフたちには実際にどのように作られているのかを見て、蔵元さんの話を聞いてそれぞれの味見をしてもらった後に、では実際に料理になった時にどうなるか?を体験してもらったそうです。

写真:「言葉は通じなくても料理で通じます。彼らの笑顔を見てもらったら、喜んでもらっていることがわかりますよね」と長田さん。
そうした経験を何度か重ねていくうちに、長田さんはやはり、現場を見て周りの空気を感じてから日本の料理を食べることが「みんなで一緒にできる体験」であり、愛知県ならではの価値を提供できると実感してきたそうです。碧南市は市内だけでも多くの蔵があり、常滑にある澤田酒造さんにも車で30分ほどで行ける利便性があります。見るだけ、食べるだけではない様々な体験をしてもらえることが強みになっていきます。その時に提供すべきはやはり郷土料理だと長田さんは続けます。
「郷土料理というのは、都会の料理ではなくローカルな料理です。地域の食材を地域の調味料で味付けをしたものですが、最近はあまり郷土料理が家庭では作られなくなってきました。愛知県の郷土料理に箱寿司がありますが、昔はこれがごちそうでした。ちょっとした集まりの時に箱の中にご飯とそれぞれに味付けをした具をのせて蓋で押して作ります。前の日に作っておけば、当日箱寿司を持っていって切り分けるだけだし、それをお土産で親戚に渡すということもしていました。
今はお寿司屋さんのテイクアウトで手軽に手に入るので、家庭で作られることはあまりなくなってしまいました。あとは作るのが面倒くさいという理由で。ただ、子どもたちにとってはご馳走だし、地域の食文化なので、歴史的背景を含めて料理人が伝えていくことも一つの責任かなと思い活動しています。」
長田さんからは愛知の郷土食にはどのようなものがあるのか、それぞれの特長と愛知の発酵調味料との関係などもお話いただきました。南三河食文化研究会は、生産者やメーカー、料理人ではなくても誰でも入会を受け付けています。様々な分野の方がつながり、伝えていくことを目指しています。
南三河食文化研究会
参加者と登壇者のキャッチボールが生まれたパネルディスカッション
3名の話を終えた後は休憩をはさみ、パネルディスカッションへ。今回開催したセミナーの大きな目的の一つは「集まった方々で積極的に交流していただくこと」でした。そのため、パネルディスカッションでは第一部のように聞くだけではなく、会場から集められた質問に答えるという形をとりました。また、第二部の後半では4名ずつのグループに分かれ、意見交換もしていただきました。
質問① 「インバウンド外国人受け入れをするにあたって最初に行ったことは何ですか?それから、海外のお客様を呼び込む取り組みをまず何したらいいのか具体的に聞けたら嬉しいです。」
澤田さん:インバウンドの方を受け入れるのにあたって最初に行ったことは、中部運輸局さんが主催のセミナーに参加したことです。海外の方が喜ぶコンテンツを出していき、それを専門家の方に見てもらってということを繰り返して創り上げていきました。まだ自分たちからインバウンド受け入れのための発信をして直接来ていただけていて成功しているというわけではなく、スタートしたばかりです。
うちに来られるための中継点となってくださっている方は料理人もしくは料理教室の先生が多いです。あとは、セントレア空港が近いのでホテルにチラシを置いていただき、来ていただいていることもあります。
長田さん:私の所は「外国の人と一緒に行くけどいい?」と言われ、「一緒に来る方が言葉を話せるならいいよ」という感じで受け入れています。積極的に受け入れるために自ら取り組んでいることはまだありません。
吉田さん:お2人のお話からすると、一灯さんを紹介する誰かがいて、そこからお蔵やお店に到達しているので、誰か紹介者がいるというコトですよね。その情報のタッチポイントを誰がどこにどれだけ置くかということが非常に重要かと思います。今回アジア圏が課題になっていますよね。では、アジアの方々はどこでどのように情報を取っているかに関しては第二回目の時にお話がありますので、お楽しみにしていただければと思います。
質問②「海外への発信はしているのでしょうか?また外国語対応はどのようにしているんでしょうか?ガイドや表示、見学ツアーなどはどのように発信していらっしゃいますか?
澤田さん:それほど多くはできていませんが、何気ない酒蔵の風景や仕込みの風景をインスタグラムで英語と日本語の2ヶ国で発信しています。それから言語の対応ですが、酒蔵見学ツアーは私が英語でご案内をします。スタッフも2名ほど英語が話せる者がいるので、お店に来た方の説明や試飲対応はスタッフがやってくれます。英語以外の言語対応はまだ難しいですが、多言語による商品説明の表示等は現在作成中です。
見学ツアーに関しては、今の所海外への発信ではなくリクルートさんやじゃらんさんのプランに載せて国内向けに発信していくことを考えています。まずは日本の方々に対しての経験値を積みながら外国の方への対応に横展開していくつもりです。やること自体は大きくは変わらないので内容をブラッシュアップしていき、伝え方を工夫していこうと思います。
吉田さん:長田さんは基本的に通訳の方がいらっしゃるとのことでしたが、それでも直接海外の方から話しかけられたりすることもあるかと思います。そうした時のコミュニケーションを取る工夫は何かありますか?
長田さん:私の場合は英語は通じなくても料理は通じるんですよね。通訳さんありきの所はありますが、食材や調味料を見せて「こんな風にこの調味料を使っています」とか「今はこの季節だからこの料理を出しています」とか、なるべくこの地ならでは、日本ならではのことを伝えるようにしています。そういう風にすると、背景とか成り立ちとかを良くわかってくれるんですよね。なんとなくだったとしても、それを聞くのが楽しいと言ってくださいます。
あとはうちでは土鍋をお客様の所にもっていって、目の前で蓋を開けて炊き立てのご飯をお見せしています。そうしたライブ感を含めて楽しんでもらえるように演出しています。
吉田さん:そういう工夫があると、日本の日常はこういう風なんだとか、日本料理ってこんな風に出てくるんだというがわかりやすいですよね。澤田さんの方ではコミュニケーションにおける工夫はありますか?
澤田さん:お酒の作り方で難しいことを聞かれる時があります。でも、そもそも日本人でも日本酒の作り方を全部理解できる人は少ないのに、外国の方に全部説明しても前提条件が違うし通じるのか?と思う時があります。そうした場合はあまり難しいことは伝えずわかりやすくさらっとお伝えして、想いを伝えるという感じでやっています。
コミュニケーションで言うと、長田さんは料理で伝えられているように、酒蔵の場合はお酒を呑んでもらうのが一番ですね。そこがファーストステップのコミュニケーションだと思っています。その時に、日本酒の香りとか味わいを伝えるための英語表現は理解しながらお話しています。
吉田さん:なるほど。つまり、日本酒のスペックや製法といったものは、プロの方々は気になるだろうけれども、それよりも味わっていただくことがまず大事だということですね。それでその中から出てきた疑問とか、香りの表現とか、そういったことに対して答えられるぐらいの準備をされてきたんですね。
質問③「外国の方々を酒蔵見学に受け入れる時のルールはどんなことがありますか?観光ツアー受入の場合のリスクはありますか?」
澤田さん:酒蔵見学の受け入れで見学者の方にお願いしているのは納豆を食べてこないでくださいとか、非常に香りが影響しますので、あまり香りの強い香水や整髪料・洗剤を避けてくださいということですね。見学に来られる際はそれらをお伝えすると、話のきっかけにもなるのでいいと思います。ただ、お店に入って試飲する程度でしたらそこまで気にしていません。
観光ツアーに関しては皆様マナーよく見学してくださっているので、今まで海外の方を受け入れてリスクと感じたことはありません。逆に、国内の団体さんで勝手に色々触られてしまったことはありますが…。あとは、いつまでに受付でいつまでにキャンセル可能かなど、やり取りをする相手とのキャンセル規約の工夫は必要だと思っています。
長田さん:私は外国の方とトラブルになったことは無いですね。京都で料亭を構えている友人から聞いた話ですが、天ぷら屋に来たのに小麦が食べられないとか甲殻アレルギーがあるとかを店に来てから知るといったことがあったそうです。それは事前のコミュニケーションの問題ですが、そうしたことが結構あるそうです。
私もビーガンとかハラルなど食習慣や宗教上の理由などがある場合はその辺のところをよく聞いてから対応ができるかどうかを判断します。
質問④「一灯さんのように愛知県の飲食店に地元の蔵元の発酵調味料をアピールしてもらうためにはどういった取組をすると良いでしょうか?」
長田さん:蔵元さんや生産者さんとのコミュニケーションが重要ですね。私の所ではこの地域をPRするために店先に使用している調味料を飾っていますし、それによってお客様と話すきっかけになるからやっていることです。皆さん地元の食材とか何かしら使ってはいると思いますが、店によってそれをウリにしていきたい人と見せたくない人がいると思うので、店次第ですかね。

質問⑤「食文化を伝えるのは日本人とインバウンドどちらが大切だと思いますか?」
澤田さん:やはり日本人が自国の文化を理解してこそと思うので、日本人と言わせていただきます。日本の人たちが日本酒を再認識して未来につながっていくといいなと思っています。
長田さん:10年前に和食がユネスコの世界文化遺産に登録されましたが、あれは当時「このまま食の欧米化が進むと和食を食べなくなってしまう」という危機感からです。その結果どうなったかと言うと、海外に和食レストランがものすごく増えました。「和食は季節感があり、発酵というものを使って体に良いものだ」というイメージもあって、結構海外では人気があります。日本に行った経験がなくて、日本人も全く関係ないのに和食を謳っている寿司とか天ぷらなどのレストランも多いですが。
かたや日本はどうか?ですけど、やっぱり1度海外の方に注目してもらって「向こうが和食が良いって言ってるから日本の方々も見直そうよ」という流れかなと。日本人にPRするのも大切だし、海外で和食ブームを起こして、あえて日本人に改めて和食の良さに気づいてもらうという、両方が必要かなと思ってます。
質問⑥「これだけ愛知中部の発酵文化が盛り上がってきているのに、全国的、また世界的にはまだまだ認知されていない最大の理由は何だと思いますか?」
澤田さん:愛知県が協議会を作ってまだ半年しか経っていませんし、愛知県の中でもまだまだ知らない方がいるので、世界に伝わるにはまだ時間がかかると思います。最大の理由は、おそらく愛知県民があまり愛知の食文化に対して興味関心が低く、産業としてベースにありながらあまり大切だと思われていないからじゃないかなと思っています。なので、このことをきっかけに単にブームで終わらせるのではなく、これを機に今後永続して100年200年に続く愛知の発酵醸造文化をみんなで守って高めていきましょう!というのが今日こうしたセミナーが開催されている意味だと認識しています。
長田さん:豆味噌とかたまり醤油とか自分たちの食文化って身近で当たり前すぎるんですよね。日常で当たり前であって、ちっともご馳走ではない。よそから人が来た時に招待するような料理ではないと思っている。いわゆるケ(日常)の文化ですよね。これはおそらく、どの地域に行っても同じ現象があると思います。
以前、仲間がB1グランプリに出店しようとなった時「とりめし※」の案が出ました。そうしたら、メンバーの一人が「あんなもん人に提供する料理じゃなくて、うちで食うもんだろ」という意見が出たそうです。でも、最終的にとりめしにしたら大ヒットしたみたいです。
今後はそうした日常(ケ)の料理をガストロノミーや美食の切り口からもう少し外に発信するための料理にしていく必要があるのかもしれませんね。そうしていくのもみんなの協力があってこそなので、これからの課題にしていこうと思います。
※薄くスライスした成鶏(廃鶏)をたまり醤油と砂糖、鶏脂で水を使わずに味をつけ、炊いたご飯と混ぜ合わせる高浜市の郷土料理。

会場からの質疑応答を終えた後は、参加者さん同士で最後の質問に対してのグループトークをしていただきました。その中で出てきた意見は「地元の人が愛知の食文化について知らない・魅力的だと思っていないこと」や「一部の人しか愛知の発酵を盛り上げようとしていなくて、町全体で取り組んでいかないと文化として残っていかない」「様々な組織が立ち上がっているが、ひとつの方向性をもって取り組んでいけていない現状がある」など。短い時間の中だったので解決策よりも課題の洗い出しとなったグループが多かったですが、皆さん活発に意見を交換されていました。

セミナー終了後のアンケートでは、
「伝統文化工芸体験型コンテンツとの連携をどうするかの課題の発見やガイドとしての学びを深めることができましたがさらに探求して学んでいきたいです。」
「やはりインバウンドというニーズが愛知にあるのだなという事がより認識できましたので、今後インバウンドを取り入れられるように積極的に行動したいと思いました。」
「見て、聴いて、食すを弊社オリジナルで行えるよう企画立てます。」
「観光客の受入についての期待や課題を共有してこの地域ならではの旅行企画に活かしていきたいと思います。」
「先ずは発酵文化の事をより一層学び、 地域の方々の誇りになるように伝えて行きたいと思います。」
など、ご感想をいただきました。第2回のセミナーではタイ・香港を事例として「インバウンド旅行者を知る」をテーマに開催いたします。
conomichiでは
【conomichi(コノミチ)】は、
「co(「共に」を意味する接頭辞)」と「michi(未知・道)」を組み合わせた造語です。
訪れる人と地域が未知なる道を一緒に歩んで元気になっていく、「この道」の先の未知なる価値を共に創り地域に新たな人や想いを運ぶ、そんな姿から名付けました。
今まで知らなかった場所へ出かけて、その地域の風土や歴史・文化にふれ、その地域の人々と共に何かを生み出すこと。そこには好奇心を満たしてくれる体験があふれています。
地域で頑張るプレイヤーの、一風変わったコンテンツの数々。
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