REPORT
2025/03/28

地方創生の先進地域から学ぶ【conomichi local college in沼津】

 JR東海・JTAが運営するconomichiが地方創生の先進地域をフィールドに、そこでしか得られない実践と学びを提供するconomichi local college。

今回のフィールドは静岡県沼津市です。沼津市では近年、公共空間活用とエリア価値の向上や、まちなかの空きビルなどの資源のポテンシャルを探る様々な面白いプロジェクトが起こっています。これらのプロジェクトを舞台に、「地域活性化に興味がある」「地元に何か恩返しをしたい」という意欲にあふれる10-20代の総勢13名が、沼津市の魅力とともに地方創生の実践や手法を学ぶ2つのコースに参加しました。




 


週末の沼津コース:公園を舞台に「にぎわい<風景」をつくる

3月1日に実施された〈週末の沼津コース〉では、イベント「週末の沼津」発起人の小松浩二さんによる案内のもと、参加者が出店者サポートに当たったほか、イベントを中心とした沼津のまちなかの魅力を知るトーク・街歩きに参加しました。


2020年秋より沼津中央公園で不定期開催されてきた同イベントは、従来のようなにぎわい創出が目的ではなく、起業や事業継承、商業リブランディングにつながる、エリアの魅力を発信するショーケースとなることを目指してきました。


「開始当初から、にぎわいや売上を目的とするのではなく、『365日のための1日の風景をつくる』ことを大事にしてきました。たとえば出店者にのぼり旗を控えていただく、ゴミ箱は設置せず各店舗へゴミを返却してもらう、運営スタッフが率先して芝生に直接座るなど、僕たちが目指す風景をつくるための小さな工夫も積み重ねてきています。
だから今日は皆さんも率先して芝生に座りましょう、この話を終える頃には芝生に座る人も増えているかもしれません(笑)」(小松さん)
 


写真:小松浩二さんは近隣商店街で八百屋「REFS」を経営しながら、沼津あげつち商店街の振興組合理事長はじめ様々な形で街のプレイヤーとして活動しています。「週末の沼津」も持続可能なイベントとして成立するよう、ボランティア体制など試行錯誤してきた経験を参加者に紹介しました。
 


朝9時から始まった出店者の搬入作業。参加者はまずブース什器やテント、テーブル、椅子の運び込みや、搬入車両からの荷降ろしを手伝いました。
この日参加したのはほとんどが「沼津・静岡県に来るのは初めて」と話す首都圏在住の社会人や大学生や高校生。作業を進めながら参加者同士少しずつ打ち解け、お互いの参加動機、普段の興味や活動について会話していました。


2年後の新たなまちなかの風景に向かって

1時間半ほどで搬入設営作業は完了し、いよいよ「週末の沼津」オープン!この日は公園が発着地点となるマラソン大会も行われ、早速設置されたテーブルで一息つくマラソンランナーの姿含め、公園内では大勢の方々がそれぞれの週末を楽しむ光景がみられました。


沼津中央公園は2027年に敷地内でカフェの開業を予定しており、2025年8月より再整備工事を控えています。これまでも利用実証トライアルとして、仮設階段や屋根の設置などを通して、カフェが「公園のキッチン」として機能するための導線づくりが行われてきました。
 


正午過ぎからは「公園に溢れる未来の風景」をテーマに、2年後の再整備計画に向けて、関係者がそれぞれの視点からこの場所の未来を考えるトークが繰り広げられました。


「小さな子どもの視点や行動範囲を尊重し、限られたエリアでも未来の選択肢が増える場づくりを」と提案した「はぐくむまちぬまづ研究所」運営の菊地悠子さん、駅近で緑が多く市役所等まちの機能にもアクセスする導線の中にあることを中央公園の魅力として挙げながら「子育て世代も過ごしやすい風景づくりを通して場所の良さを発揮したい」と話したカフェの設計担当・合同会社レイバー代表の鈴木智博さんは、ともにお子さんを連れて登壇。一時期途絶えていた園内のラジオ体操を復活させ、毎朝清掃ボランティアも行っている鈴木ヨシミツさんは公園の歴史を最もよく知る存在として、今後への期待を語りました。カフェのコンセプトづくりと運営を担当する塩谷雅子さんは、「日常の中で自分をどのように楽しませるか」をキーワードに挙げ、「小さなたのしみ」を見つけられる場所としての理想像に言及しました。
 


経済的価値だけではなく、社会的な価値を共有しやすい地方ローカルならではの「余白のある、ゆるやかなまちづくり」におけるプレイヤーたちの視点に触れる時間となりました。


生まれ変わった空きビルがエリア価値向上の立役者に

最後に、公園に隣接する狩野川の河川敷と、小松さんが振興組合理事長を務めるあげつち商店街エリアの散策へ出かけました。
 


かつて狩野川沿いには漁港があり、市の経済の中心地でした。周辺商店街や銀行、放送会社等はその名残として存在しています。「昔に比べると寂しい街になってしまった」と話す小松さんは、現在空きビルの紹介活動も行政と連携しながら行っています。うなぎの卸店を改修したクラフトジン蒸留所〈沼津蒸留所〉直営バー〈THE CHAMBER〉、かつて乾物屋の住居兼倉庫だった建物を、元住人の所有物も尊重して残した民泊施設〈蔵ノ上〉など「建物を壊さずにリノベーションする」事例を実際に訪れ紹介しました。

 


〈THE CHAMBER〉で購入したドリンクを、河川敷に設置された行政管轄のベンチに座り楽しむ方の風景も日常となっています。「民間と行政で分断されず、混ざり合い街に溢れ出ながら風景が作れたら」(小松さん)

河川敷から上がり今度は商店街エリアへ。土曜日の昼間ながら、シャッターが降りているお店も少なくない印象です。しかし小松さんはこれこそ、地方商店街ならではの営業戦略だと語ります。
 


「品揃えのクオリティが評判の古着屋さんは、海外出張で営業時期が限定されていても、開店時期は毎日行列ができるほど。僕が経営する八百屋〈REFS〉も、地元で信頼を得ながら同時にオンライン販路も確立しています。こういった経営方法もローカルならではです」(小松さん)


公園へ戻る道中、「どうしよう、初めて沼津来たけど住みたくなった...」とつぶやく大学生も。小松さん曰く、実際に「週末の沼津」がきっかけで移住を決めた方もいるそうで、まさに「まちを動かすプラットフォーム」の魅力がしっかりconomichi local college参加者にも効いたようです。

まちなかリノベーションコース:民泊&シェアハウスをリノベしよう

3月8日に開催された〈まちなかリノベーションコース〉では、2025年春に開業予定の民泊&シェアハウス〈ホトリノ〉のリノベーション現場を訪れ、実際にペンキ塗装作業を実施しました。
案内人は〈ホトリノ〉の内装設計を担当する鈴木智博さん(建築士/合同会社レイバー代表)。今回は5名中2名が高校生と比較的若い世代が集まりました。
 


川沿いの3階建て住居が〈ホトリノ〉に生まれ変わります

2015年から始まったリノベーションまちづくりの取組により、多くの事業や活動が創出されてきました。静岡県東部地域を中心に、建築デザインを軸としながら各種まちづくりプロデュースを手がけてきた鈴木さんも、2021〜2023年度に沼津市役所が主催した〈_for now〉事業に携わり、その流れの一端を担ってきました。

「〈_for now〉は『とりあえず』という意味。まちなかにたくさんある空きビルなどの資源のポテンシャルを探るために『とりあえず』事業活動のトライアルを実践する場として展開されてきました。この取組からネットワークが広がり、新しい活動が生まれた実績もできています。〈ホトリノ〉もこの流れで、市と協力して『まちなか居住トライアル』プログラムを実施することになりました」(鈴木さん)


花火大会を楽しんだ親戚の家を蘇らせたい

当日は物件オーナーであり、かつて居住していた方の親戚にあたる芹澤さんも参加し、リノベーションに至った経緯を語りました。
 


「沼津で生まれ育ち、大学進学を機に県外へ出てそのまま就職し、コロナ禍前後に沼津市に戻ってきました。かつて親戚の自宅だったこの建物もちょうど空き、オーナーとなった時に『沼津でリノベーションをお願いするなら鈴木さん』と思い、ホトリノの構想が立ち上がりました。
この建物のすぐ近くで毎夏、花火大会が行われるので、昔は3階が特等席だったんです。この風景を今後ここで過ごす人にもぜひ見てほしいです」(芹澤さん)
 

 

ホトリノ3階から見える風景

建物内で、まずは鈴木さんによるペンキ塗りの道具や塗り方のコツ、養生テープの貼り方等をレクチャー。自身が内装を手がける物件で数々のペンキ塗りを体験してきた鈴木さん、慣れた手つきでスムーズにペンキを塗っていきます。
 


持ち手の微妙な角度や塗るスピード次第で効率的できれいに塗装が仕上がります。「ペンキ塗りは大変というイメージを持たれる方もいますが、コツを抑えれば誰でも簡単にできますよ」(鈴木さん)


参加者同士のコミュニケーションが活性する雰囲気

いざ始めてみると意外に難しい!そして単純作業ながら、微妙な力加減の調整やローラーの往来で筋肉痛の予感がし始める参加者たち。しかし、鈴木さんや芹沢さん、そして『まちなか居住トライアル』プログラムを応援する沼津市役所の方も加わり、作業を共にしながら沼津市・静岡県の地方創生に関する事例、仕事や学校の話、はては進路や就職相談にまで会話が盛り上がりました。同じ興味を持った参加者同士でコミュニケーションが自然と広がるのもconomichi local collegeの魅力かもしれません。
 


ペンキで白くなった壁で室内も明るくなり始めたところで昼食休憩に入ります。すっかり参加者同士で打ち解けたあとに街歩きを開始しました。〈週末の沼津コース〉同様に、市の中心を流れる狩野側沿いを歩きつつ、対岸へ渡り前回とは異なる風景を目撃することに。ちなみに〈蔵ノ上〉は芹沢さんと市役所職員の方が出会った場所でもあるのだそうです。
 


リノベーションを体験しながら知を得る貴重な体験

街歩きから戻ったあとは、壁のムラのある部分の仕上げにかかります。「ペンキが乾いて白くなると逆にムラに気づいてくる」とこだわりが出てくる参加者も。客室になるイメージが一気に高まります。

3階の客室の壁が全て真っ白になったところで1日の作業は完了。達成感にあふれた参加者たちからは
「古民家のリノベーションには興味があったが、実際に体験する機会は珍しいのでこのように作業することができ、大変だったが楽しかった」
「普段職場で限られた世界しか見ていないため、興味のある地方創生についてリノベーション作業というかたちで知ることができて意義があった」
「沼津市でまちづくりに関わるさまざまな立場の方と、カジュアルに会話をしながら新しいことを知り、一緒に作業する貴重な時間だった」
という感想が挙がりました。

「地方創生」という一言に含まれるさまざまなアプローチについて、レクチャーをとおして手法を知り、実践をとおして体感する充実した2コースでした。

執筆:瀧瀬彩恵

撮影:Nana Okawa


conomichiでは

【conomichi(コノミチ)】は、
「co(「共に」を意味する接頭辞)」と「michi(未知・道)」を組み合わせた造語です。

訪れる人と地域が未知なる道を一緒に歩んで元気になっていく、「この道」の先の未知なる価値を共に創り地域に新たな人や想いを運ぶ、そんな姿から名付けました。

今まで知らなかった場所へ出かけて、その地域の風土や歴史・文化にふれ、その地域の人々と共に何かを生み出すこと。そこには好奇心を満たしてくれる体験があふれています。

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