REPORT
2025/03/10

【愛知発酵食文化セミナーVol.3】インバウンド受入現場から学ぶを開催

REPORT

2025/2/7 更新

【愛知県発酵食文化セミナーVol.1】知多・西三河の発酵食と観光の可能性

 愛知発酵食文化×インバウンド観光について、発酵関係事業者によるトーク

 イベントを実施。

  • 魅力発見
  • ローカルプレイヤー
  • 地域資源
  • ガストロノミー
愛知県岡崎市

REPORT

2025/2/7 更新

【愛知発酵食文化セミナーVol.2】インバウンド旅行者を知る-タイ・香港を事例として-

 愛知発酵食文化×インバウンド観光について、タイ、香港それぞれの航空会社から

 その可能性についてトークイベントを開催。

  • 魅力発見
  • ローカルプレイヤー
  • 地域資源
  • ガストロノミー
愛知県

 2024年11月から3回にわたり開催された「愛知発酵食文化セミナー」の最終回。実際にインバウンドを含め国内外から観光客を受け入れている醸造蔵を訪問し、その取り組みについて学ぶ体験型のセミナーを開催しました。研修場所は、岡崎市にある味噌蔵「カクキュー八丁味噌」。カクキュー八丁味噌は約40年前から蔵を一般開放し、年間20万人もの観光客を受け入れています。

INDEX

  • 現場視察①観光客目線で蔵見学を体験
  • 現場視察②売店、飲食ブースで人気のお土産を知る
  • 時代の変遷とともに観光客の受入体制を整えてきたカクキュー八丁味噌
  • 簡単でいいから英語でご案内することを心掛ける
  • 参加者の感想

 



現場視察①観光客目線で蔵見学を体験

まずは、英語と中国語ができるガイドさんに英語と日本語で蔵を案内していただき、観光客目線で蔵見学を体験。どういった案内をされたら自分が楽しくなるのか?ガイドさんはどんなことに注意しながらご案内をしているのか?などを感じていただきました。海外の方からはどのような質問が出るのか?どんな方が来るのか?なども蔵をまわりながらお話いただきました。


左:蔵見学の最後には八丁味噌と赤出し味噌の味噌汁、味噌田楽の試食。右:味噌田楽は海外の方の好みが分かれるとのこと。そもそもこんにゃくを食べる文化が欧米圏はほとんどない。


現場視察②売店、飲食ブースで人気のお土産を知る

蔵見学の後は売店と飲食ブースの視察へ。カクキュー八丁味噌さんで海外の方に人気のお土産は「八丁味噌パウダー」。八丁味噌を粉末状にし、色々なものに振りかけることができるので手軽に八丁味噌のうま味をプラスすることができます。売店では「塩をかける時の代わりに使ってみてください」と使い方をお伝えしているそうです。個包装でいくつか入っていて、軽くてかさばらない、というのもお土産としての人気のポイント。こちらの八丁味噌パウダーがかかったソフトクリームも大人気で、ソフトクリームを目的に来られる方も多いそうです。


左:海外の方のお土産として人気の八丁味噌パウダー。右:台湾の方がわざわざこのソフトクリームを目的に蔵見学に来ることもある。八丁味噌が練り込まれ、八丁味噌パウダーがかかっている。チーズのような濃厚な味が人気。

売店の隣にある「岡崎カクキュー八丁村」は、カクキュー八丁味噌さん直営のお食事処。八丁味噌の代名詞ともいえる味噌煮込みうどんや味噌カツ定食など、八丁味噌を堪能できるメニューが並んでいます。味噌煮込みうどんに使われている卵や味噌カツの豚肉、揚げ油などは愛知県内のこだわり生産者さんのものを使用しています。


写真:休日のランチタイムは待ち時間が出るほど人気。


時代の変遷とともに観光客の受入体制を整えてきたカクキュー八丁味噌

蔵、売店、食事処の現場視察を終え、第2部へ。カクキュー八丁味噌さんがどのように観光客を受け入れるようになってきたのか、現場で動いてきた2名の方からお話を伺いました。


写真:合資会社 八丁味噌 企画室 兼 品質管理部 野村健治様

「八丁味噌に限らず、国内の味噌消費量はこの50年間で減り続け、60年前と比べると約半分の消費量になっています。その中でも海外への輸出は増えていて、アメリカ・ヨーロッパには55~56年前から輸出しています。現在は35ヶ国以上に広がっていて、注目されています。

  当社は2025年で創業380年になります。岡崎城から八丁(約870m)の距離にある村なので八丁町と呼ばれ、そこでつくられる味噌だから『八丁味噌』になりました。岡崎は東海道の宿場町だったので八丁味噌はこの地の名物となり、岡崎藩御用達として保護されてきました。明治時代には宮内庁御用達になるなど昔から知名度が高く人気でした。戦争中は統制価格が設定されたために品質を維持することが難しく、休業宣言を出すなど歴史の変遷とともに八丁味噌は歩んできました。

 観光地化の流れをお話しすると、昭和47年に観光バスが停まれるような大きな駐車場スペースを確保しました。その頃から観光客受け入れのための設備投資が徐々に始まり、平成3年に史料館を整え、平成5年に売店、平成16年に食事処を作りました。

 徳川家康や岡崎が取り上げられたNHKの連続テレビ小説や大河ドラマ、愛知万博などで大きく人の動きがあって来場者が5万人、10万人と増えていきました。定休日に来られてガッカリされるお客様も多かったので、10万人になった頃に定休日を廃止しいつでもお客様を受け入れられるように体制を整えました。その後最高で35万人もの方がご来場されました。

 海外の観光客の方は台湾の方が非常に多いです。それは、岡崎市と一緒に台湾に観光のプロモーションで出展しているので、その影響があります。海外の方々の統計を取れているのは団体の場合なので、個人でふらっと訪問される方の国や数は正確に把握できていませんが、欧米の方も蔵見学に来られています。」


簡単でいいから英語でご案内することを心掛ける

カクキュー八丁味噌さんでは、ガイドスタッフ全員が英語や中国語を話せるわけではありません。外国語を話せないガイドさんが外国人を案内する際には、蔵の様子を英語や中国語で説明したフリップを活用しています。これは、耳が聞こえない日本の方が来られた際に「どうやったらお伝えできるか?」と考えた末に日本語のフィリップを作って説明したことをヒントにされたそうです。


写真:株式会社八丁味噌 執行役員 安藤惠美様

「台湾の例を具体的に申し上げますと、コロナ前までは年2回の割合で台湾での商談会を行ってきました。その他の国としましては、2018年と2020年にタイ、2019年には香港の商談会に参加をして、インバウンドのお客様の誘致に力を入れてきました。

最近は特に個人的に蔵見学を申し込まれる方が増えているので、『こちらが1924年に建てられた味噌蔵です』のように説明を簡単にして英語で案内するなど、なるべく英語でコミュニケーションが取れるよう工夫しています。

ガイドは学生さん含めて20名ほどが登録しています。案内ガイドの研修の進め方としては、まずガイドマニュアルを基に案内する内容を覚えます。同時に先輩ガイドに同行して、案内内容と立ち位置の確認を数回行います。実際にコースを回りながら案内の練習をし、社内でのテストに合格したのちにデビューです。個人差はありますが、皆さんだいたい1ヶ月ほどでデビューしています。

最初は人前で話すのが苦手だった方でも、ある時からガラッと変わりイキイキと話されるようになります。慣れてくるともっとお客様に楽しんでもらうためにはどうしたらいいか?と各自で調べて案内の幅を広げたり、クイズを出したりと個性が出てきます。一人一人が真剣に考えてくれるので、お客様からは『何度も見学に来ているけれど、前回と違うガイドさんでまた違った楽しみ方ができました』とおっしゃってくださいます。この会社が好きで、八丁味噌が好きというメンバーに恵まれています。」


参加者の感想

カクキュー八丁味噌さんでは長年蔵見学を受け入れてきましたが、近年は「体験」を求められる方が多くなっていることを感じ、味噌づくりや味噌玉づくりをする見学コースも試験的に初めているそうです。

今回のセミナーに参加された方々からは

「愛知の発酵食文化を広めていくための市場調査が必要だと感じていたが、実際に見学し現場の声を聞くことで、台湾のお客様などにも八丁味噌のアピールを自信を持って行うことが出来ると確信しました!あとは当社でやっている販促などを活かして広めていきたいと思います。」

「伝統文化工芸体験型コンテンツとの連携をどうするかの課題の発見やガイドとしての学びを深めることができましたがさらに探求して学んでいきたいです。」

「ガイド育成などに活かしてより観光客の満足度を上げていきたい。」

「各国の属性に合わせた誘客施策が必要になることが学べました。」

など多くのご感想をいただきました。時代と共に400年、変わらない製法と変わりゆく世の中のニーズへの対応を学べる1日となりました。


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【conomichi(コノミチ)】は、
「co(「共に」を意味する接頭辞)」と「michi(未知・道)」を組み合わせた造語です。

訪れる人と地域が未知なる道を一緒に歩んで元気になっていく、「この道」の先の未知なる価値を共に創り地域に新たな人や想いを運ぶ、そんな姿から名付けました。

今まで知らなかった場所へ出かけて、その地域の風土や歴史・文化にふれ、その地域の人々と共に何かを生み出すこと。そこには好奇心を満たしてくれる体験があふれています。

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