REPORT
2024/06/13

苅って、剥いで、茹でる。竹の達人から五感で学ぶ、美味しい国産メンマの作り方。【Vol.2イベントレポート】

長野県南部の飯田市を舞台に、ローカルでは当たり前の「マルチワーク」の実践者からこれからの生き方を学ぶプログラム「里山LIFEアカデミー」。3月26日に行われたVol.1のオンライントークセッションと連動して、Vol.2となる今回は、実際に飯田市内でメンマづくりを体験できる現地プログラムが行なわれました。


ガイドは、地域プレイヤーのひとりである「NPO法人いなだに竹Links」(以下、いなだに竹Links)代表理事の曽根原宗夫さん。ここでは計15名の参加者とともに体験した現地プログラムの模様を、ライター目線でお届けします。
 

▼ 「里山LIFEアカデミーVol.1」イベントレポートはこちら
https://market.jr-central.co.jp/conomichi/report/detail/18
▼地域プレイヤー・曽根原宗夫さんのインタビューはこちら
https://market.jr-central.co.jp/conomichi/interview/detail/15
 

美味しいメンマになる竹の特徴とは?ノコギリを持っていざ竹藪へ。

爽やかな快晴に恵まれた5月11日、里山LIFEアカデミーVol.2の現地プログラムが開催されました。 朝、JR飯田線飯田駅に集合した参加者一同は、車に乗り込みさっそく今回の舞台となる放置竹林へ向かいます。

今回、竹の伐採を体験する場となった放置竹林は、曽根原さんが代表理事を務める「いなだに竹Links」が整備を進めている竹林のひとる。かつては隣を走る道路を覆うほど繋がっていたため、通学中の生徒がサルに襲われるなど危険な状態だったそうですが、いまではすっきと整備された明るい空間となっています。曽根原さんやいなだに竹Linksのスタッフの方々に案内されながら竹林のなかへ。さっそく、曽根原さんの竹に関するレクチャーが始まります。

竹林のなかで、曽根原さんの話にしっかり耳を傾ける参加者たち​​​

国内に自生している竹は真竹(まだけ)・淡竹(はちく)・孟宗竹(もうそうちく)の3種類があって、いなちくには食用として中国から輸入された孟宗竹を使っていること、竹の地下茎に注目すれば地下に埋まっているタケノコの場所も特定できることなど、竹にまつわる興味深いお話を短い時間でギュッと学ぶことができました。知識が加わると、竹林の見え方も変わってきます。

竹林を改めて眺めてみると、頭上を覆う青々とした竹林のなかに、きれいな紫色の皮をまとった背丈1~2mほどの孟宗竹の幼竹がポツポツと点在しています。いなだに竹Linksが商品化しているメンマ「いなちく」は、この幼竹を使うのだそう。なぜ幼竹なのかと言うと、幼竹の段階で伐採することで竹林の繁茂を抑えられるから。そしてメンマに加工するにあたってタケノコまで成長してしまうとやらかすぎてしまうので、幼竹の方が硬さがちょうどよいからなのだとか。

まずは曽根原さんが幼竹の伐採を実践する様子を見学

曽根原さんたちのアドバイスをいただきながら参加者それぞれがノコギリを手に幼竹の伐採を体験。あっという間に軽トラの荷台がいっぱいになるほどの幼竹を収穫することができました。

幼竹とはいえ背丈ほどの高さがあるので、根本に切れ込みを入れて倒してから切り離すと安全だと教わる

竹がメンマに生まれ変わるまで

収穫した幼竹はまだあくまで「竹」。これがメンマになるなんてイメージが湧きません。一体どのように加工すると私たちが普段口にするメンマになるのでしょう?

実は意外とシンプル。幼竹を茹でると、もうほぼメンマの状態に仕上がるのだそう。そこで、収穫した幼竹を持って、竜丘公民館へ。まずは、幼竹の皮を剥ぎ、食べやすい大きさにカット。皮を剥いだ幼竹は柔らかいので包丁で簡単に切ることができます。サクサクと心地よく切れるので、最初の方はストレス解消にもなります。

皮の上から包丁で縦に切り込みを入れると、内側から鮮やかな黄緑色の竹がお目見え

ひとり1本ずつの幼竹を調理台へ持ち込み、黙々とカットをする参加者たち

ただ、1本分の幼竹をカットするにもそこそこ手間がかかります。実際に商品化するとなったら、きっと一日に何本もカットすることに……。いなちく作りの時期はこれにかかりっきりで竹林整備が進まなくなる、と曽根原さんがおっしゃっていたことを、身をもって理解できました。 とはいえ今回は参加者同士の協力もあり、収穫した幼竹の下準備もスムーズに終了。災害時に使用される大型の炊き出し器にカットした幼竹とたっぷりの水を入れたら、アクを抜くために茹でていきます。

「バンブーダイアモンド」が最高に美味しい釜揚げタイミング?

幼竹をグツグツと茹でている間に、参加者は車座になって昼食をとりました。どこから来たのか、なぜこのイベントに参加しようと思ったのかなど、さまざまな話題で盛り上がります。そもそも「竹」に興味をもち集まった仲間なので、話が弾むのは当たり前のこと。曽根原さんのお話も相変わらずおもしろく、気づいたら幼竹の茹で上がりの時間がやってきました。

茹で時間の目安は、沸騰してから約40分間。これがえぐみと甘味が少し残るベストタイミングなのだそう。沸騰するお湯のなかを覗き込むと、40分前は黄緑色だった幼竹が、輝く黄金色に! これを曽根原さんたちは“バンブーダイアモンド”と呼んでいるそうです。

「これがバンブーダイヤモンドよ!」と満面の笑みで、茹でた幼竹をザル上げする曽根原さん

ザル上げしたばかりの幼竹に塩を少しつけて食べてみると、えぐみはほぼなく竹の素直な甘さを感じられる味わいに。これだけで白米や日本酒が止まらなくなるようなおいしさでした。つい先ほどまで竹林に生えていた竹を食べているという状況そのものが、おいしさをいっそう引き立たせてくれたのかもしれません。

ザル上げして粗熱を取った幼竹を各々が用意してきた容器に入れ、そこに分量の塩を入れたらメンマ作りは完了。いなちくは余計な保存料や着色料も一切入れないので工程はとてもシンプルなのです。

現地プログラムで得たヒントを自分たちの地域でどう生かす?

しかし、参加者の方々の熱はまだまだ冷めず、全工程が終わった後に、曽根原さんからいなだに竹Linksの取り組みについての追加レクチャーが行われました。メモ帳を片手に前のめりで竹についての質問を投げかける参加者の姿勢に曽根原さんのトークにも熱が入ります。

追加の座学では、竹林整備活動の真の目的が「水の保全」にある理由や、メンマの他に、バーベキュー用の竹網、竹いかだ、竹炭など食べるにとどまらない竹活用の可能性について、横に繋がりながら全国規模で竹の活用を進めていくる「純国産メンマプロジェクト」や、今年の10月には「第6回 純国産メンマサミット」が飯田で初開催されること、竹の食用化をさらに進めるために、「野菜」や「山菜」をもじって「竹菜」という名称を開発し、竹菜レシピを全国から募集していることなどまで。竹にまつわるワクワクするアイデアがいくつも飛び出しました。

※曽根原さんの活動の詳細については、公開済みのインタビュー記事をぜひご覧ください。
https://market.jr-central.co.jp/conomichi/interview/detail/15

今回のイベントの参加者の方々について印象的だったことは、すでに地域で森林整備や竹林整備に関わっている人や、東京と長野県で二拠点生活をしながら里山暮らしを実践している人など、“地域プレイヤー”とも呼べる方々が多く集まっていたことです。そういった方々にとって、実践者の先輩である曽根原さんの体験談は貴重な学びの機会になったはず。また今回のイベント参加を通じて同じような問題意識や興味をもつ仲間と繋がれたことも、メンマとともに価値ある収穫になったのではと思いました。

前回、曽根原さんへのインタビューのなかで、「竹林整備は、“楽しい、美味しい、暖かい”をモットーに活動しているんです」というエピソードが出てきました。私自身、今回の体験を通じて、竹が美味しいメンマやエネルギー源に変わるということを体感的に知り、地域課題としての竹林が、むしろ貴重な地域資源に見えるように、大きく目線が変わりました。

見方が変われば、地域の課題も味方になる。どんな社会問題であっても、「本質的な問題は何なのか」を突き詰め、楽しくアプローチしていくことで、むしろ人が集まるコンテンツに変えていくこともできる。そんな学びの多い半日になりました。

執筆:松元麻希
写真:高坂浩司
編集:北埜航太

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