
技術は継ぐ、常識は超える。―クローズかオープンか?価値の再読から始める新規事業戦略― 【I-OPEN Central AICHI Session】開催レポート
- 日 程
- 7/24
- 場 所
- 愛知県
- 主 催
- 中部経済産業局
時代の変化が加速する中で必要な新しい挑戦、長年守ってきた技術や伝統をどう未来へと繋いでいくか、そして事業を継ぐ者として、あるいは新規事業を担う者として、その突破口はどこにあるのか——。
社会の大きな変化の背景には、常にさまざまな技術や資源を創造的な視点で読み解き、価値観のパラダイムシフトを巻き起こしていく人の姿があります。I-OPEN Centralは、中部地域で未来を切りひらく「仲間」と出会い、想いと創造力を起点に、新たな一歩を踏み出すプロジェクト。
そのキックオフとなったのが、この度開催された【I-OPEN Central AICHI Session】です。
全く異なる戦略で挑戦を続ける2人の経営者、株式会社生方製作所 代表取締役社長の生方眞之介さんとカジグループ代表取締役社長の梶政隆さんをゲストに迎え、自社の価値をいかに定義し、どう世の中に伝えていくべきか——、会場で繰り広げられた熱いトークセッションをレポートします。
INDEX
- 企業の哲学が伝わるインプットセッション
- クローズの中にあるのは、確固たる使命
- 守るべきもの、打ち破っていくべきもの
- 他を圧倒する技術力。クローズとするか、オープンとするか、その分岐点
- 自社を理解する。「誇り」と「危機感」、そして「追求」する

企業の哲学が伝わるインプットセッション
吉澤:みなさま、こんにちは。本日モデレーターを務めさせていただきます、吉澤です。I-OPEN Centralは地域が抱える社会課題に焦点を当て、誰かの助けになりたい、社会をより良くしたい、そんな思いと創造力を起点に、個人、企業、自治体が立場や役割を超えて未来を切りひらく取り組みを支援する中部経済産業局のプロジェクトです。本日のセッションは、主催の中部経済産業局に加えて、JR東海のコノミチとアトツギスタートアップ共創コミュニティタキビコの共同開催となっております。ではさっそくですが、ゲストのご紹介をさせていただきます。「株式会社生方製作所」代表取締役社長の生方眞之介さんと、「カジグループ」代表取締役社長の梶政隆さんです。自己紹介をお願いします。
生方:参加者の皆さんこんにちは。僕自身、本当にまだまだ経営者として未熟なところもいっぱいあります。今日は皆さんと一緒に、何か新しくて面白いこと考えたらいいなと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。
梶:こんにちは。本当に今日を楽しみに、石川県の金沢からやってまいりました。よろしくお願いします。
吉澤:本日のトークセッションは、クローズかオープンか、価値の再読から始める新規事業戦略というテーマを設定しています。なぜ守るのか、なぜ見せるのかということで、グローバルニッチトップ企業と業界の常識を覆すオープンファクトリーという、全く異なるアプローチに見えるお2人に、意思決定の裏側にある哲学や危機感、そして新規事業への情熱などについてお伺いしていきたいと思っております。まずはインプットということで、お2人の方から自社のご紹介をしていただきます。
クローズの中にあるのは、確固たる使命

生方:生方製作所は真面目な会社でございまして、今年68年目にして、売り上げが初の100億円突破を達成しました。アメリカと中国にも拠点を持つ弊社は、製品とサービスを通じて社会に安全を供給する、人の命を守る会社であると思っています。例えば製品でいうと、エアコンの室外機に入っているコンプレッサーがもし爆発したら、何百、何千という人が亡くなってしまう。その保護スイッチをつくっているのが我が社です。実はこれ世界シェア70%。他にも、感震器といって地震の時に家にガスが入るのを防ぐ遮断デバイスもつくっています。どちらも人の命を守るために必要で、事故が起きるのを未然に防ぐものです。

生方:それとは別にぜひ自慢させていただきたいところとして、4年前から始めた防災バッグの事業があります。既に市場としては成熟していましたが、まだまだ参入する機会があると思いました。例えば手袋一つとっても、商品の多くは軍手が入っているのですが、落ちている瓦に軍手では到底ダメなんです。人の命を守ることを真剣に考えてきた弊社だからこそ、確かな製品を送り出せるはずだと考えました。そうして製造を開始して、1年目の売り上げは3000万円。正直この金額にも驚いたのですが、昨年は4億8000万円にまでなりました。弊社の製品を示す言葉として、「SILENT HERO」があります。“皆さんが知らない部分で、皆さんのことを守っている”という思いが込められています。
全てをオープンに。発信することで価値を高める

梶:カジグループは、糸加工・織・編・染・縫製・企画まで一貫した生産体制を有する企業で、それを起点にさまざまな事業に取り組んでいます。マシナリー事業は、91年目になる梶製作所という機械をつくる会社から、糸を加工する会社、糸からテキスタイルをつくる会社、そして繊維ブランドまであります。真似できない糸をつくれば、真似することのできない生地ができ、そして真似されにくい製品ができると考え、糸加工にとてもこだわっています。特筆したいのは、髪の毛の3分の1ぐらいの目に見えない細い糸にストレッチ加工をし、織物にできる技術。プラダやユニクロ、ノースフェイス、パタゴニアなどから依頼をいただいています。

梶:糸にこだわった上で、生地のブランディングにも必死に取り組んでいます。弊社には「79 KAJI」という言葉があるのですが、79は金の元素番号で、“金のような価値のある生地ブランドになりたい”という思いを込めています。中でも僕らが今自信を持っているのが、軽量で丈夫な生地。それを使った「K-3B」という合理性を追求したセットアップブランドは、ギンザシックスや表参道ヒルズ、大丸東京店などでも取り扱ってもらっている。格式ある店舗に入らせてもらうことで、日本の繊維産業の技術を世界に向けて発信しています。

梶:そして今まさに挑戦している部分であり、弊社の真ん中に置いている事業が、石川県珠洲市につくった産業観光施設「KAJI FACTORY PARK」です。70億円強を投資しました。ほとんどやけくそです。とにかくやりたいことをやるために必死にお金をかき集めました。1万坪の土地を買い、内5500坪は公園で、レストランもあります。レストランは自社運営で、できるだけ能登の食材を使うことで能登半島地震で被災された農家さんを応援したいなという思いでやっています。もちろん、自社のブランドのショップもあるほか、生地を使ったワークショップも開催しています。「KAJI FACTORY PARK」の目的はただ一つ、“人が集まる場所をつくりたい”ということです。人が集まらないことにはブランディングのための発信ができませんから。「KAJI FACTORY PARK」を通して、僕らのコーポレートミッションは日本の繊維を元気にすることだ、と声を大にして言っています。
吉澤:お話を聞いていると、どちらの会社も長く続いてきた会社で、長年守り続けてきた大切なものがあるのかなと思いました。その価値を繋げていくためには、そのままではいられないということも多分にあったのかなと想像します。今、何を守り、何を逆に打ち破らないといけないと考えてらっしゃるのかを、まずはお聞きしていきたいと思います。
守るべきもの、打ち破っていくべきもの
生方:守らないといけないのは、間違いなく会社のアイデンティティです。僕は祖父が作った会社を継いでいます。祖父がどういう思いで、何をやりたくてこの会社を興したのか、どんな価値を提供したかったのかというのはやはりとても大事な部分。そしてそれはやはり、製品を通じて人の命を守るということなんです。むしろこれ以外はやらなくてよくて、これだけを全部やればいいと思っています。
吉澤:逆に打ち破っていかなければならないと考えているものはありますか?
生方:社員たちから怒られてしまいそうですが、外資系企業からこの会社に入ったときに、中小企業の在り方に衝撃を受けた。すごくぬるま湯だったんですよね。それは世界シェアナンバーワンの製品を作っている会社というのもあって、僕たちは実は、競合は1社しかありません。極端な話、一生懸命営業をしなくても注文が来るような状況だったのですが、それでも時代は変わっていくもので。僕が会社に入った頃、中国からデッドコピーの製品が出てきました。そのデッドコピーをつくり出した中国の新興企業の社長は、弊社の中国工場の元工場長でした。その企業相手に中国で訴訟を起こして、総額8億円かけて何年も戦い、負けています。結果的に、世界的なシェアも落ちた。今までみたいにはいかないぞということを、肌で感じることになりました。

生方:それを経て、打ち破らなければならないというか、やらなくてならないことは二つあると考えています。一つは、柱の多角化。取り扱っている製品以外にも、人の命を守るというテーマに沿った新しいデバイスをつくるということです。もう一つは、差別化したデバイスです。生方製作所はニッチなことをやっているため競合がほとんどいないのですが、それは他者ではつくれないからというのもある。うちのエンジニアは変態ばっかりなんですよ。本当に気持ちが悪いくらいすごいそういうのが好きな人たち。それは祖父の代からずっとそうなので、受け継がれているその部分は変えずに、新しいデバイスを作り続けることが必要だと思っています。実は先ほどお話した防災バッグも、社内でできる仕事に限りがあった女性社員に、とにかくやってみてくれという感じで、半ば強引に託して進めてもらいました。居心地が悪いと感じる社員もいると思いますけど、ぬるま湯に浸かっているような部分は、かなり変えたところです。
吉澤:守っていくべきものと変えていくべきものについて、先ほど繊維産業は斜陽にあるというお話もありましたが、その辺りも含め、梶さんもお聞かせください。

梶:世界人口は増えているということを前提に、広い意味で繊維業界は成長産業だと大勢の人が言うんですけど、僕は全く違うと思っています。僕ら日本でつくる生地や糸、製品というのは付加価値があるものですが、それが例えばアフリカで売れるかというと、なかなか売れない。やはり先進国で、価値を認めてくださる方が買ってくれるわけです。しかし、先進国の人口はどんどん減っています。そういう意味でいうと、やはり間違いなく斜陽産業だなって思います。その上で、繊維業界は基本的にイメージが悪いんだろうなと思っていて。何をもって悪いのかというと、それは雇用難です。50年、100年先を考えたときに、ずっと人が来て続けてくれるのか、常に危機感でしかありません。日本の繊維業界で残っている方たちは世界に通用するすごい技術を持っているのに、日本の物づくりをする方の多くが発信は苦手で、伝わっていかない。そこはやっぱり、やれる人、できる人が中心となってみんなで発信していく必要がある。それが先ほど紹介したような僕らの事業活動でもあるわけです。
他を圧倒する技術力。クローズとするか、オープンとするか、その分岐点
吉澤:では、実際に意思決定をしていく上で、どういう裏側や危機があったのかお聞かせいただけますか。
生方:とても恥ずかしい話ですけど、シェアがトップの会社で競合がいない会社の営業マンというのは、業者に物を売っても支払いが滞りなくされているかという回収のところはやらなかったり、商談もお客さんと一緒にご飯を食べて気持ちよく注文をもらうことだったりします。ここは正直に言うと、調子がよかった時代をずっとやってきた人たちを変えることはできませんでした。しかし、新しく入ってきた人たちにはそんな状況にちゃんと違和感を持ってくれます。本当にこれでいいのかという気持ちを持っている子たちと一緒に再構築してきたようなところがあります。

生方:具体的にどんなところで再構築をしたかと言うと、エアコンも一つ挙げられます。エアコンには地球のオゾン層を破壊する冷媒というものが使われていていたのですが、それに対する風当たりはどんどん強く厳しくなっている。そこで、冷媒に代わって可燃性冷媒が地球温暖化係数を抑制するために使われるようになっているのですが、可燃性だけに、火をつけると爆発する。エアコンメーカーが今までとは違うことに気を使わなければならなくなりました。そこで我々の出番となる。僕たちはメーカーの事業内容を知っていますから、この先どういうことをやらないといけないかとか、この先どういうふうに変わっていくか、それを先回りして営業するということをしました。同時に、特性を変えて付加価値を上げ、ユニットで出しました。価格交渉もあるわけですが、そこは真似できない我々の技術で対抗するということをしました。
吉澤:すごいですね。どこでそのやり方に気づいたのでしょうか。
生方:やはり敵を知ることだと思います。競合がどういうことをやってくるか、お客様がどういうことをやるかというのを総合的に見る。デッドコピーの会社は真似しかできないわけですが、逆に言うと、僕たちがシェアをとっているものっていつかは真似されるということでもあります。競合が入った瞬間、値段は半値になる。やはり、時代の流れとしっかり並走して、どんどん土俵を変えていくことが大切で、それがうちならできるのだと思っています。
吉澤:梶さんにお聞きしたいのは、まさに繊維も、中国の安いものが入ってくるということがあったと思うのですけど。そこからどうブランディングに繋がっていくのか、経緯や思いを教えてください。
梶:地元に戻って最初に入ったカジナイロンという会社は、社名の通りナイロンが得意で、パンストで国内シェアを持っていました。15年ぐらい前は1億2000万計画で12億足売れていましたが、今は5分の1から6分の1ぐらいになっています。パンストを履かない女性が増えて、伸び悩んだわけです。とはいえ、入社したときにはパンストだけの会社だと将来絶対なくなるなって思っていた。また、「カジレーネ」という超高密度のナイロンを使ったタイプライターで国内トップシェアだった織物の会社もあるのですが、ここもタイプライターに頼っていてはいずれ絶対だめになるなっていう思いがあって。実はずっと危機感の中で生きてきました。

梶:先ほど皆さんにも手にしてもらった細い糸は、僕らが考案したものも数年後には必ず他社に全部持っていかれるだろうから技術で勝るしかないと、どんどん細くなっていった結果として生まれたものです。しかし、もう人の目には見えないぐらいの細さになってきて、これ以上細くはできない領域まできてしまった。ここからは相当違う開発を考えなければいけないとなった時に、イノベーションハブ、つまり違う業界の方とイノベーティブな話をして、新しいテキスタイル開発をやっていこうという思いが生まれたわけです。そのためには、やっぱり自分たちの技術をオープンにするしかない。そうしないと見つけてくれないですし、見つけてくれるようにすることこそが必要だという考えに至りました。
吉澤:それは、見つけてもらえるんだろうなと思って自分たちで価値を出しているのか、それはわからないけども、ひとまず自分たちのものを出していっているのか、どちらですか。
梶:どちらかというと、自分たちの技術を自慢しています。自慢できるくらいでないと食いついてくれませんから。異業種の方から見つけてもらおうと思ったら、声を大にして、「僕たちはこの工場でこんな人たちとこんな物づくりをしている、こんな技術でやっている」と言う必要がある。見つけてくれる方の中には研究者や技術者もいて、面白い話がたくさんあります。
生方:すごく面白いお話ですね。オープンとクローズの話でいうと、どちらかというと僕はクローズ派なんです。先ほども申し上げましたけれども、全てオープンにして全ての技術を持っていかれたことがあり、それがとても怖いからなんですけど。ただ、梶さんがおっしゃっていた真似をするというのはなかなかなくならないし、一生繰り返すことでもあるということは僕も思っていて、すごくわかります。常に先に行き続けなきゃダメなんですよね。向こうがやっと追いついたと思ったら、あれ、生方さんもう先に行っちゃってるじゃんっていう状況をつくることがとても大事だと、僕はずっと思っています。

梶:僕らの生地を売っているお客さんからは、「梶さんあまり見せんといておいてくれよ」って怒られます。だけど、もはや新しい生地を作って新しい提案をすることはできないので、オープンにしないとこれ以上新しいものもできないので、それを理解してくださいと伝えています。中国の企業やベトナムの方もすごい見に来られます。工場の2階は全ての工程をオープンにしていて、繊維の工場でここまで見せるところがあるかっていうくらい見せています。中国はたいしたもんですよ。すごいカメラを持ってきて、録画して、帰国後は拡大して分析されていると思う。それでも、勇気を持ってちゃんと見せていこうと思っています。
自社を理解する。「誇り」と「危機感」、そして「追求」する
吉澤:そもそも何でそんなに新しいものを生み出せるのか気になりました。また、ここは負けないみたいな自社の強みをすごく理解されていますよね。どうやって理解できるようになったのかをお聞きしたいです。
生方:維持は衰退です。維持するだけでは真似されてしまうので、それぐらいの会社ではダメだという思いがまずあります。その上で、かなり攻めます。お金も使います。何か変革を加える時は攻める時だと思っています。自分たちの会社の価値に気付けたのは、いつかと言われるとわからない。でも31歳で会社に入った時点で、純粋にすごい会社だなと思いましたし、こんなにいい会社なのだからこの技術は誰も真似できないだろうというのも感じました。入社当時、売り上げが80億円あったんですけど、その98%は30年近く売り続けている製品でしたから。
吉澤:それは、1回外からに出たからこそ比較ができたという感じですか?
生方:そうですね。僕は消費財メーカーで洗剤などの営業をやっていました。その時に、僕はこれをこの先ずっとやるんだろうかと何となく思っていて。その点、僕らの製作所のやっていることって、人の命を守ることですから。超かっこいいと思う。会社のアイデンティティに僕自身惹かれているのだと思います。
梶:僕の場合は、パンストとナイロンのいつか終わるのではという恐怖があったことが大きいですね。僕は29歳で会社に入って30歳で専務になった。専務になった時、父から「1億以上の投資であっても一切言わなくていい。もう全部お前に任す」って言われました。それが逆にプレッシャーで。パンストで儲かってはいたけど、何となく恐怖と戦っていたのは事実で、それでですね。「この技術ってどんな技術だろう」ということを始めて考えました。そうして改めて向き合うと、パンストの糸って、細くて、透明感があって、よく伸びて、破れない。そういう強みを分析したときに、今まであまりやっていなかった、パンストの糸を織物にすることを思いついた。微差の追求を徹底的にしていくことで、ストレッチ素材が強みとして加わりました。今でこそよく目にするけど当時はあまりなくて、そこを徹底的にやったわけですが、それってもともと持っている技術のほんのちょっとの微差の追求なんです。同時に、余暇を増やしていこうという国内の風潮も感じていて、ストレッチはアウトドアの分野でも絶対伸びるだろうなって思っていたのもあります。どんなに儲かる太い糸、厚い生地の話がきても全部断って、うちは薄い生地しかやらないというブランディングもした。それが今の工場の体質になっています。
生方:すごくかっこいいですね。

吉澤:最後に戦略のところで、どこをオープンにしてどこクローズドにしていくかの境界線をお聞きしたいなと思います。
梶:見せないものはないぐらい全部見せます。ただ、真似されない自信はあって、それは、 “ブラックボックス”となる工程です。ナイロンは公定水分量が4.5%あって、常に水分を吸ったり吐いたりしています。水を吸ったり吐いたりするということは、工場の空調にすごくお金がかかるということでもあるのですが、そこに命をかけています。細い糸の揺らぎを最小限にするための風の流れ、湿度や温度など、やはりここでも空調を徹底的に管理。そしてこの部分は、外から見える部分ではありません。それは、完成した糸に表れます。中国ではうちと同じ糸が安価で出回っているし、むしろ僕らの糸は世界で一番高値ですけど、例えばプラダなら、「梶さんの生地は何でちょっと膨らみあるんだろう」と言いながら必ず僕らのものを選んでくれています。メゾンブランドのデザイナーは糸を触っただけでわかってくれる違いがあるのだと実感しています。
生方:逆にうちはクローズの会社です。設備が並ぶ、その全製造工程において窓がないんです。デッドコピーの半端じゃないトラウマが現場にも反映されているような状況なんですけど、そんな会社の中で、僕がオープンにする線引きは二つあります。一つは「イニシアティブをとれるかどうか」、もう一つは「ゼロからイチを生めるかどうか」です。生方製作所はとてもマニアックなものづくりをしているので、生方製作所だけでは実は何もできないんです。うちの先にはメカとエレクトロニクスの会社などがあって、何か二つの、全然違う技術を掛け合わせることによって差別化された特異的なものを作っていくということをしている。これは、日本の会社でやりたいと思っていることでもあります。日本の製造業を大事にするためにもこの点は僕たちの強みですよ、こういうお客さんと繋げますよ、こういう風にしたらできますよというイニシアティブをとれること、そしてその在り方がゼロイチの何かを生み出せるのかどうか、ということが境界です。
吉澤:クローズかオープンか、価値の再読から始める新規事業戦略というテーマで行った本日のトーク。なぜ守るのか、なぜ見せるのか。それぞれの立場から、大変興味深いお話をありがとうございました!




登壇者プロフィール
conomichiでは
【conomichi(コノミチ)】は、
「co(「共に」を意味する接頭辞)」と「michi(未知・道)」を組み合わせた造語です。
訪れる人と地域が未知なる道を一緒に歩んで元気になっていく、「この道」の先の未知なる価値を共に創り地域に新たな人や想いを運ぶ、そんな姿から名付けました。
今まで知らなかった場所へ出かけて、その地域の風土や歴史・文化にふれ、その地域の人々と共に何かを生み出すこと。そこには好奇心を満たしてくれる体験があふれています。
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