
自社の“当たり前”を再定義するブランド戦略【I-OPEN Central MIE Session】開催レポート
- 日 程
- 9/24
- 場 所
- 三重県
- 主 催
- 中部経済産業局 共催:三重県
今回のI-OPEN Central MIE Sessionでは、社内の“当たり前”を社会の価値へと転換した、2つの挑戦の物語を紐解きました。
登場するのは、国民的ロングセラー「おにぎりせんべい」で知られる伊勢志摩の老舗菓子メーカー マスヤの挑戦。その安定した基盤の上で、現場で培った改善ノウハウという“当たり前”を、地域全体を豊かにする知的資産「マスヤメソッド」へと昇華させたのがIXホールディングスです。
もう一方は、刃物のまち関市で70年以上「切る」技術を追求し、そのコア技術という“当たり前”を農業という全く新しい市場で再定義。農家の課題解決に挑み、「ぶどう巻つる処理機」を開発したニッケンかみそり。
社内に眠るノウハウを新たなサービスへと転換する視点と、磨き上げたコア技術を異分野へと展開する発想。二人の実践者が語る「再定義」のリアルなプロセスから、あなたの会社に眠る価値を再発見し、未来を切り拓くための具体的なヒントが見つかるはずです。
INDEX
- トークセッション「自社の当たり前を再定義するブランド戦略」
- 価値の再発見「何か新しいことをやらないと生き残れない」
- まったく新しく見えるものも、実は蓄積された技術の延長線上にある
- 現場に入ることで見つかる価値、可能性、変化
- 社外へ、社内へ——。情報発信が活路を拓く
- 取り組みをどう物語にし、昇華するか。最終ゴールは“伊勢志摩モデル”
- 刃物のまち。800年の歴史を持つ岐阜県関市から始まる物語
- 情報発信の継続、そして未来に向けた投資



トークセッション「自社の当たり前を再定義するブランド戦略」

吉澤:愛知、石川、富山セッションを経て、本日はI-OPEN Centralのセッション第4回目となります。I-OPEN Centralは地域が抱える社会課題に焦点を当て、誰かの助けになりたい、社会をより良くしたい、そんな思いと創造力を起点に、個人、企業、自治体が立場や役割を超えて未来を切り拓く取り組みを支援する中部経済産業局のプロジェクトです。本日のセッションは、主催の中部経済産業局に加えて、JR東海のコノミチとアトツギスタートアップ共創コミュニティタキビコの共同開催となっております。本日のテーマは「自社の当たり前を再定義するブランド戦略」ということで、地域に深く根ざした事業を展開するお二方にご登場いただきます。IXデジタル株式会社 代表取締役社長の神山大輔さんと、ニッケンかみそり株式会社 常務取締役の熊田征純さんです。
神山: IXデジタル株式会社という会社の代表を務めております神山と申します。IXホールディングスの中核企業はマスヤ=おにぎりせんべいですが、実際はいろいろな事業をしています。異なる業種業態での展開をしていて、マスヤ以外にも伊勢萬という日本酒の会社、ホテルの志摩地中海村、ツーリズムの会社、高齢者介護の会社、そしてIXデジタルがあります。IXデジタルの事業内容はDX推進支援、要はシステム屋さんでございます。設立は2024年10月、私も入れて8人の会社です。私は現在51歳。三重県出身で、三重大学では生物を専攻していましたが、ひょんなことからNECに入社し、以来IT業界に身を置いてきました。伊勢に戻ったのが2018年。IXデジタル株式会社は、伊勢志摩を新しい時代に向かって力強くトランスフォームをさせたい、ということで立ち上げました。「本物づくり」、「人づくり」、「地域づくり」という3つの理念を掲げて邁進しています。DXは単なる効率化ではなくて、情報発信に力を入れ、ブランドのストーリーを紡ぎ出す力になると思いながらやっています。

熊田:刃物のまち、岐阜県関市にあるニッケンかみそりに勤めます熊田といいます。私自身生まれも育ちも関市でして、今年40歳になります。関西の工学系の大学を出たあと、三重県の工作機械メーカーに入社し、海外駐在を経て3年前にUターンし、家業に入りました。私どもの会社は祖父が創業した72年目の会社でして、30名程の規模でやっています。カミソリの生産販売がメイン事業ですが、カミソリの市場規模は年々縮小しているため、一般的なカミソリの他に、その刃を転用してヘアカッター、鼻毛カッター、すね毛カッターという用途に特化した製品を出すことで何とか売り上げを維持していました。ただ、それもまたニッチな世界ではあり、依然としてある危機感から農業分野に進出しました。

熊田:日本のぶどうというのは、そのまま食べる生食用、ワインに加工する醸造用ともに人気が上昇しているのですが、深刻な病気である晩腐病・黒とう病というものがありまして、ぶどうの木がこれにかかると品質、収穫量ともに減少して、本来得られるはずの収益を得られないという問題が発生しています。これらの病気リスクを下げるには、ぶどうの巻きつるを徹底的に除去するということが求められているんですけれども、このつるがめちゃくちゃ硬くてとにかく量が多いので、農家の皆さんが取りきれない。それで結果、病気になってしまうという状況に陥っていました。弊社の強みは「切る」技術です。その切る技術を生かして、業界初の電動工具を開発しました。誰でも楽に速く巻きつる除去をすることができ、病害リスクが低減できるようになりました。この製品を生み出して2年ぐらいが経ちましたが、国内で既に700台以上販売して、売上4000万円を出しています。
価値の再発見「何か新しいことをやらないと生き残れない」
吉澤:本日のテーマ「自社の当たり前を再定義するブランド戦略」に沿い、当たり前のものに新しい価値を見出す「価値の再発見」、それをストーリーへと昇華する「物語の構築」、どう周りを巻き込みムーブメントを起こしていくかの「未来のファンづくり」に焦点を当てお話を伺いたいと思います。まず熊田さんにお聞きします。技術など、外を経験したからこそ見えた自分の会社の宝を発見するようなことはありましたか。
熊田:海外で働いてみると、地場産業ってやっぱり強いなということに気がつきました。地元は刃物のまちとして800年の歴史があります。高校まではその中で過ごしていて、20年ぶりに地元に帰ったとき、改めて、異常なくらい刃物の関連企業があるなということを思いました。そこに価値を感じましたし、関わらずに死んだら後悔すると思って戻りました。
吉澤:先ほど、刃物市場は斜陽というお話もありましたが、戻ったときの会社の雰囲気はどんな感じでしたか。
熊田:私が戻ったのはコロナ禍のタイミングで、実は売り上げは落ちていませんでした。おうち時間が増えて体毛などをケアする時間を確保できるようになったのか、あるいはオンライン会議の頻度が増えたことで自分の顔を見る機会が増え、身だしなみに気をつけるようなったのか、意外とカミソリの需要があったんです。実はまだまだ根強いファンがいるとわかり、そこをどう取りこぼしなく拾っていくかを考えていました。

吉澤:新規事業に取り組まれる会社って、危機感から出発されることが多い印象を持っていたんですけど、ぶどう巻つる処理機を生み出すきっかけはあったんですか。
熊田:需要はあったとはいえ、何か新しいことをやらないと生き残れないというのは社内の共通認識としてありました。業界やジャンルを問わず、切るという技術で生き残る道を見つけないとまずい。それでネタ集めの作業の一環で、市役所内にある関市ビジネスサポートセンターに何かいいネタないですかと伺いに行ったところ、ぶどうが巻きつるで困っているらしいよと聞いたんです。それがそのままヒントになって、また、窓口の方がぶどう農家で有名な産地に知り合いがいるということで、じゃあカミソリ片手に行ってみようというのが始まりです。
まったく新しく見えるものも、実は蓄積された技術の延長線上にある
熊田:カミソリの刃でつるが切れればいいねという期待を込めて行ったわけですけども、硬すぎて切れない。ぶどうのつるって小指くらいの太さの木みたいなもので、それがぐるぐる巻いているので、ハサミで取ろうとするとかなりの握力や体力がいるんです。これは電動工具でないと無理だとなり、製品の開発に至りました。
吉澤:現場の課題に気づいてから、開発するまでどれぐらいの期間を重ねたんですか。
熊田:約5年です。割と早い段階でつるを挟み込んで使うイメージは固まりました。でも刃の配置や角度など、詰めていく部分は相当試行錯誤を繰り返しました。似たようなものが他でもできるかもしれませんが、こんなにサクサク切れるものはなかなか真似できないんじゃないかなと思います。

吉澤:カミソリとは形状が違いますよね。全く新しいチャレンジでしたか。
熊田:先端の角度、切る部分っていう意味で言うと、私どもの培ってきた切る技術が生かされています。刃物メーカーだからこそ成し得たものです。
神山:ハードウェアが必要になりますよね。それはどこでどうつながったんですか。
熊田:刃物メーカーがいきなり電動工具を開発したように見えると思うんですけども、工具の部分も今までのカミソリ事業の延長線上にあるんです。カミソリは専用機という工程を経て製品になっていくのですが、専用機を調整したりメンテナンスしたりする技術の蓄積、技術者の知見の積み重ねによって、今回この課題に対してはどうするのがいいのか、という再確認で生まれているんです。
現場に入ることで見つかる価値、可能性、変化
吉澤:現場を見に行くことも大切だなと思いながらお聞きしていたのですが、そこはDXも一緒なんじゃないかなと思うんですけども。神山さんは、導入していく中で、現場で見て、これは難しいなという経験はありますか。
神山:もちろんあります。マスヤの工場も、食品工場だからそもそもスマートフォンの持ち込みはダメですし、また、みんな作ることはプロですが、デジタルに触れない環境の方々や高齢の方々が多いんです。説明会では、「iPadを割ってしまいそう」という声が出ました。そんな発想がまず僕らにはないわけですが、そこはもう、割れるのなら割ってしまってくださいくらいの気持ちでスタートしました。結果的に、昔は生産日報でも何でも紙に書いていたわけですが、現在は全てiPadで伝えることができています。現場に行かないとそもそも話が始まらないところがあると思います。

「現場に行かないとそもそも話が始まらない」と神山さん。
吉澤:現場に入りながらいろいろ進めていった中で、それによって見えた自社の価値とか、何か可能性みたいなものはありますか。
神山:情報共有コミュニケーションがまずあります。我々いろんな業種がある中で、Slackの導入をはじめ、社内における情報の流通がすごくできるようになりました。それによって会議の時間もかなり減っていますし、効率化が進みました。また、最近はAIがすごいです。会議をしても、議事録は書かなくなりました。文字認識させて、あとは生成AIでデータ化します。デジタルになればなるほど時間を短縮でき、生み出した時間で違うことができます。今は、その価値をさらにどう活用するか模索している状況です。
社外へ、社内へ——。情報発信が活路を拓く
吉澤:日々の業務で忙殺されていたら、当たり前のものを見直そうみたいなことはならないですよね。情報がオープンになっているといろいろなものを見ることができ、掛け合わせもできる。
熊田:DXのコンテストで選出されたとのことですが、賞を受賞されたのは総合的な取り組みが評価されたのか、DXでこんな使い方があったのかみたいなところだったのか、どちらだったんですか。
神山:地方の中小企業がこれだけいろんなことができているという、総合的な評価でいただきました。他の会社は新しいシステムを開発するところが多かったのですが、弊社は既存のものをうまく当てはめていって、技術化が進んでいます。単なるツールの導入だけでは評価されなかったと思いますが、取り組みについてさまざまな場所で情報発信をしていたことも大きかったように思います。

熊田さんと神山さん、それぞれ互いの話に興味津々で、セッションも大盛り上がり。
吉澤:iPadを実際に導入してみて、変化の中でもとくに大きなものは何ですか。
神山:「絶対使いたくない」って言う会社が、今やもう「Slackなしでは仕事できない」と言っているところでしょうか。
吉澤:ぶどうの電動工具も使わないのは考えられないという話だと思いますが、実際、開発の過程で農家さんはどんな反応を示されたのですか。
熊田:ある程度形になってから、使ってみたい農家さんはありませんかと声掛けをして、実際に使ってもらいました。どんな反応というか、皆さんの使用感の情報をベースにブラッシュアップし、2年前にリリースしたという感じです。現場の声をとにかく集めたっていうのが、試作品段階のメインの取り組みになります。
吉澤:農家さんとしては、そういうのを待っていたよ。みたいな感じだったのですね。
熊田:完全にそうですね。とても喜んでくださって、いつか誰かが開発してくれるだろうとは思いつつ、ニッチすぎていったい誰がやってくれるんだろうとみんなが思っているような状態だった、と言われたことがありました。ニッチな声を拾いに行くところに生き残る道があるのかなと常々感じていたので、まさにそれを形にできた。嬉しかったですね。
吉澤:開発に5年って結構長いですけど、社内ではどう見られていましたか。
熊田:まだやってるの、という動きは正直ありました。ただ売れ出してからは、意外と評判がいいんじゃないかなという見方に変わっているのを感じています。ちゃんとリリースして、走り出してようやく社内で認められたみたいなのは正直ありますね。
吉澤:実績やうまくいっている状況などを、社内に伝えるということをされたのですか。
熊田:そうですね。農家さんの声を工場側にフィードバックすると喜んでいただけるというのはありますので、ポジティブなお客様の声は積極的に展開するようにしています。

熱心に会話を進める二人。参加者も聞き入っていました。
神山:(電動工具を手に)すごく、軽いですよね。
吉澤:この軽さや見た目からは想像できないくらい、パワフルに回りますよね。
熊田:見た目はインパクトドライバーみたいに見えるんですけど、インパクトであれば高速回転で1分間に3000~4000回転ぐらいのところ、これは1万5000回転なんです。とにかくつるが硬いので、4000回転程度では表面を曲げることしかできず、もっと速くして攻撃回数を増やした方がいいということで1万5000回転にたどり着きました。その分、ちょっとモーターは重くなってしまったのですけれど。
神山:いえ軽いですよ。年配者でも使いやすいと思う。カッコイイ商品名とかあるんですか。
熊田:「ぶどう巻つる処理機」って、そのまんまです(笑)
神山:わかりやすいですね。
熊田:ただ今後の動きとして、ぶどうの巻きつるってニッチすぎないかっていう話にも今はなっています。バラのつるや家の外壁についた蔦など汎用性を広げることで、ロット数が増えて価格も下がってみたいな動きができないかというのは考えています。その頃にはまた、別のキャッチーな名前を見つけなきゃいけないかなと思っています。
神山:どこで買えるんですか。
熊田:農協さんとか地方の農業系の販売店さんとか。オンラインでも。8万円ぐらいですね。
取り組みをどう物語にし、昇華するか。最終ゴールは“伊勢志摩モデル”
吉澤:「物語の構築」という、共感を呼ぶブランドストーリーの作り方というところで、お話を聞いていければと思います。神山さん、地方の中小企業がDXを推進していく上で、単なるツール導入ではなく、企業のストーリーに生かし昇華させていくために意識されていることはありますか。
神山:地方だからこそできるDXというのを追求しています。東京には山ほど会社があって、それを支援するIT会社も山ほどあって、毎週、毎日のようにセミナーや展示会が開催されています。それが伊勢市だと年に1回あるかないかなんです。ネットがあるといっても、やっぱりリアルで見るのは全然違います。そんな中で、地域と地域の企業同士が助け合うようなコミュニティを作ってノウハウの共有をしていきたいと思いました。ちょうど先週、「伊勢志摩DXロードショー」というのをやらせてもらって。Slack社の技術者にDXの事例を発信してもらうことで、みんなができるねっていうのをわかって欲しかったんです。本当に評判が良くて。伊勢志摩はそんなに会社がないんですが、それでも情報共有はできていないのが現状です。DXの進み具合について話す機会を作っていくことで、伊勢志摩としてデジタルが広がっていくのではないかと思っています。そういうブランドの作り方のような気がしますね。
吉澤: 会社にDXを導入していきますという会社と、地域でやっていきますっていう会社では全然見え方が違う。実際に伊勢志摩の異なる企業さんがDXを導入したとしても、とくに利益はないじゃないですか。「伊勢志摩DXロードショー」のようなものを主催していることによって、自分たちが伊勢志摩においてDXをリードしている会社なんだって位置づけることができるのかなと思いました。そこから何か相談が来て、新しい話が出くるようなことにもつながっていきますよね。
神山:そうですね。営業目的ではないですが、結果として営業にもなっているかもしれません。
熊田:情報交換を盛んにやることによって、伊勢というエリアのみんなが成長していくことが、究極のゴールになりますか。
神山:僕のなかで究極は、伊勢志摩モデルを飛騨高山とか他のエリアに持っていければというところです。
刃物のまち。800年の歴史を持つ岐阜県関市から始まる物語
吉澤:ぶどうのつるを切る機械を世界にも出していこうと考えたときに、刃物のまち関市というところで、何か考えられますか。
熊田:刃物の三大都市「SSS」ってご存じでしょうか。刃物が有名なまちは全部「S」から始まると言われまして、まず岐阜県関市(Seki)です。それからイギリスのシェフィールド(Sheffield)、ドイツのゾーリンゲン(Solingen)です。僕自身、関市役所でしか聞いたことがなくて、全然浸透してないんです。でも、だからこそ、うちの製品をきっかけに「SSSのものだからこれは切れるよね」ぐらいまで世界でこの言葉を普及させたいなっていうのが僕の中での究極のゴール。800年の歴史を持ちサクサク切れる岐阜県関市、を広げていきたいです。
吉澤:機械として優れているだけでなく、話は出自が刃物のまちというところから始まるのって、説得力が違いますよね。
情報発信の継続、そして未来に向けた投資
吉澤:次いで、「未来のファンづくり」というところで、これからグローバル市場をどう育成していきますか。
熊田:日本のぶどう生産量は、世界全体のわずか0.2%ほどです。海外と日本で決定的に違うことが2点ありまして、まず広さが違う。日本だと1、2ヘクタールと聞くと「広いですね」って話になるんですけど、海外だと普通に3200ヘクタールとかあるんですよ。ぶどう巻つる処理機を何台も買って使ってくれるかというと、そんなちまちまやると思いますか?みたいな話で、概念からして違うわけです。それにそういうところは、すでに大手さんが何かしらしているものです。ではどこを狙うのかっていうと、一族で手作業で収穫をして、手間暇かけて1本あたり何万円もするワインを作っている、こだわりの生産者ではないかと思うんです。それで今、現地まで行って市場調査をしています。
吉澤:ちなみに海外だと、どういうふうにつるを処理しているんですか。
熊田:そもそも有名な産地は雨が少ないので、あまり気にしてないっていうのがほとんどなんです。ただやっぱり、処理した方が病気を防げると考えている人もいますし、あと海外って、ワイナリーに結婚式場や飲食店、レストランを併設しているようなところも多くて。巻きつるは見栄えがすごく悪いので、何とか処理したいけどそういう製品があること自体知らない人がほとんどです。そういう限られた人に刺さるような営業活動ができれば、まだまだ海外で売り上げを積み上げる余地がありそうだというのがあって、どう宣伝していこうかという話を今、しています。
吉澤:海外への情報発信はこれからとして、国内での情報発信で工夫されているところ、逆に苦労しているところはありますか。
熊田:認知度がなかなか上がらないというのはあります。JAさん経由でいろいろ宣伝させてもらっていても、ほとんどの農家の方は知らない。どうしたらいいか悩んだときにたどり着いたのが、中小企業庁主催のイベントでした。無料で参加でき、出るだけで宣伝できるんだからそれに越したことないねとなりました。全国各地の中小企業·小規模事業者の後継予定者が既存の経営資源を活かした新規事業アイデアを競う「アトツギ甲子園」では、賞もいただきました。私が機械を持っているのが今年の大会ポスターになっているんですけど、それだけ認知度を上げられたかなと思っています。

吉澤:神山さんも情報発信が大事とおっしゃっていましたよね。気をつけていることや工夫していることは何ですか。
神山:情報発信ができる場を常に探すようにしています。おにぎりせんべいも地元だと認知度が高いですけど、東京に行くと認知度はぐっと下がります。昨日、仙台におにぎりせんべいを持っていったんですけど、「知らない」って言われてしまって。打率を上げることも大切ですが、まずは打席に立たないといけないということで、機会さえあればいろんなところに出るようにしました。また、伊勢でも「IXって何ですか?聞いたことがない」と言われちゃうんですよね。それがあり、IXデジタルも本当はまったく違う社名にしようと思っていました。でも結果的に、ブランドイメージやコーポレートアイデンティティをもっと出していくべきだと思い直し、IXデジタルにしました。

神山さんは、未来のファンづくりのために地域を巻き込んだ投資もしています。
吉澤:コーポレートアイデンティティで言うと、「IXコミュニティ」をやられてると思うのですが、どういう考えからですか。
神山:IXコミュニティは、伊勢志摩の高校生や大学生に週末に集まってもらって、地域の社会課題をグループになってプロジェクトとして解決していくことを目的としたものです。地域にとっても大事なことですし、我々IXホールディングスにとっても、IXコミュニティがどんどん広まっていけば、未来の若者たちの間でもIXの認知度が上がるだろうと考えています。認知度があれば採用などにおいてもいい。本当にもう、未来へ向けた投資なんだと思います。



登壇者プロフィール
conomichiでは
【conomichi(コノミチ)】は、
「co(「共に」を意味する接頭辞)」と「michi(未知・道)」を組み合わせた造語です。
訪れる人と地域が未知なる道を一緒に歩んで元気になっていく、「この道」の先の未知なる価値を共に創り地域に新たな人や想いを運ぶ、そんな姿から名付けました。
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