REPORT
2026/06/23

I-OPEN Central、1年間歩んだ「想いの実装プロセス」と、熱意のバトンをつなぐ「次なる問い」との対話

日 程
2026/02/25
場 所
愛知県
主 催
中部経済産業局、TAKIBI&Co.

社会の大きな変化の背景には、常にさまざまな技術や資源を創造的な視点で読み解き、価値観のパラダイムシフトを巻き起こしていく人の姿があります。
 

「I-OPEN Central」(アイ-オープン セントラル)は“地域が抱える社会課題”に焦点を当て、誰かの助けになりたい、社会をより良くしたい、そんな想いと創造力を起点に、個人・企業・自治体が立場や役割を超えて未来を切りひらく取り組みを支援するプロジェクトです。


2025年4月のプレイベント「I-OPEN Central公開企画会議」を皮切りに、中部経済産業局主催、TAKIBI&Co.(タキビコ)とconomichiの共同開催による「I-OPEN Centralセッション」を、愛知県、岐阜県、三重県、石川県、富山県にて実施。プログラムは各県を代表する起業家をバトン形式でゲストに招いたセッションを主軸に、工場見学や参加者交流会なども企画。参加者同士がつながることで生まれるイノベーションを後押ししてきました。今年2月、1期目の終了を前に、総括となる「つながる特許庁in名古屋」が開催されました。

「つながる特許庁in名古屋」では、ここまで歩んだ「想いの実走プロセス」と、その熱意をつなぐ「次なる問い」とは何かを考えました。TAKIBI&Co.(タキビコ)の岩田真吾さん、TBWA\HAKUHODO・細田高広さんの2名に加え、モデレーターとしてconomichiプロデューサーの吉澤克哉さんが登壇。昨年4月に実施されたプレイベント「実践・実働につながるコンセプトのつくり方 I-OPEN Central公開企画会議」の三者が、再び集結する形となりました。
 

左から吉澤さん、岩田さん、来賓の「STATION Ai株式会社」代表取締役社長兼CEOの佐橋宏隆さんと「株式会社トクイテン」代表取締役の豊吉隆一郎さん、I-OPEN Centralのアジェンダオーナーで「丸菱製作所」代表取締役の戸松裕登さん、細田さん

INDEX

  • I-OPEN Central、1年間の取り組み
  • 集まる知的財産の類型化で、新たなビジネスチャンスを切りひらく
  • toCの世界をtoBの世界に食いこませる。課題の先に見える可能性
  •  AIを使ったコンサルティングで「三方よし」を狙えるか     
  • 「期」は財務上の概念に過ぎない。エコノミーは「ウェーブ」でつないでいく
  • 「中部エリアに連帯感を生む」。改めて今振り返る、I-OPEN Centralへの想い
  • オープンに内包される重要事項「3つのPR」
  • I-OPEN Centralで生まれたキーワード、「越境」「再読」「発信」
  • オーセンティシティへの関心が高まる昨今、フィールドワークは欠かせないものに
  • ストーリーテリングでつくり出される価値。「地域」がポイントに
  • 課題解決は、「開放」と「未来」で議論する
  • 様々にある「大きくしたい」の意味を特定することが突破口に。ヒントはI-OPEN Centralにあり


I-OPEN Central、1年間の取り組み

セッションの冒頭は、中部経済産業局 知的財産室室長の原田貴志さんから改めて、I-OPEN Centralのここまでの取り組みについての紹介が行われました。


原田:I-OPEN Centralは、特許庁が掲げる「一人ひとりが創造力を発揮したくなるような社会の実現を目指す」というミッションの達成を目指して立ち上げました。特許庁のミッションに込められているのは、暮らしの質の向上から社会課題の解決まで、今まで特許庁が管轄する知的財産とは縁遠いところまでイノベーションを促進させていく、という想いです。知的財産というと無機質に捉えられがちですが、そこをあえて、人の想いや情熱に着目するところが新しい視点としてあります。


その一環として、I-OPEN Centralは社会課題解決を目指すリーダーたちへの伴走支援プログラムを行ってきました。「I」には知的財産(IP)の「I」と、自分自身の「I」という意味が込められています。「OPEN」は、これまで独占するだけのものと思われていた知的財産を、社会価値を共創するために使えるのではないか、ということを掲げたいわば目標。そして「Central」は、そうした知的財産や想い、情熱を持った方たちが集える場所となることを目指すものとしてつけられています。


プログラムとしては、上半期と下半期に分けて、セミナー事業と共創ハンズオン事業に取り組んできました。セミナー事業はセッションでの深掘りを柱としつつ、工場見学も取り入れながら、参加者同士をネットワーキングする非常にユニークな取り組みとして実施してきました。

「I-OPEN Central ISHIKAWA Session」にて行われたKAJI FACTORY PARKでの工場見学の様子。各回で工場見学が実施された。

 

昨年4月に実施されたプレイベント「実践・実働につながるコンセプトのつくり方 I-OPEN Central公開企画会議」の様子。参加者たちによるグループワークでは活発なディスカッションが繰り広げられた。以降もI-OPEN Centralは集いの場としての役割も発揮してきた。

 

共創ハンズオン事業は、支援対象者を「アジェンダオーナー」と呼び、主体的かつ能動的に参加いただくアジェンダオーナーの方々にさまざまなプログラムを提供するものでした。そこに集まる参加者とのつながりを求めて集まっていただくことを前提に、求めているパートナーやアイデアを発信したり、交換し合ったりということをしてまいりました。
そして今、集まったものの類型化を進めています。知的財産の活用として、独自技術プロダクトをのれん分けし、フランチャイズ化を目指す。または、オープンにして大勢の人に使ってもらうということを目指しています。アジェンダオーナーの中にまさにそれをされている方がいらっしゃるので、ぜひご紹介いただきたいと思います。


集まる知的財産の類型化で、新たなビジネスチャンスを切りひらく

原田さんの紹介で、実際に自身の事業として類型化を行っている、アジェンダオーナーで「丸菱製作所」代表取締役の戸松裕登さんがステージに。岩田さん、細田さん、戸松さん、吉澤さんの4名でのセッションへと移行しました。
 

左から吉澤さん、岩田さん、細田さん、アジェンダオーナーの戸松さん


戸松:丸菱製作所は、愛知県春日井市にある創業70年の大手サプライヤーメーカーのサプライヤーとして続いてきた町工場です。大きな金属加工の製品を社内で一貫生産する、いわゆる加工のプロフェッショナルで、私は3代目跡取りです。I-OPEN Centralにおいて、自社の悩み、そして業界の悩みを解決できるように、「製造業のスキルマーケット化により、ものづくりの市場を開放していく」というアジェンダを設定しています。

町工場における日本のものづくりは、「完結した商流」の中に存在しています。メーカーごとにサプライチェーンという協力会社のネットワークがあって、その中にある会社は一本足経営の会社が多いです。
一方で、社会は変わっています。手ごろな仕事は海外に移り、国内では少量多品種・短納期が増え、国内受注において町工場は負荷増減に対応していかなければならなくなっている。この負荷増減が結構大変で、例えば「来月から発注量が半分になります」というようなこともままあります。直近の危機に加えて、その状況が先の見えない投資には踏み切れないという課題も生じさせています。それらの影響もあり、町工場や加工主体の企業は2000年に比べて半分ぐらいまで減少しています。

そこで私がつくったのが、工場が持つ加工技術を商品として取引できるECサイト「ASNARO(アスナロ)」です。加工技術を商品として工場間で相互に受発注やスポット取引をしていくプラットフォームで、いわば町工場のフリマサイトです。できることは大きく2つ。1つ目が、リソースをシェアしていくこと。2つ目が、自分たちの技術そのものを商品とすることで付加価値を改善していくことです。困っている日程とキーワードをアスナロサイト内で検索すると、そのとき頼める工場がすぐに見つかります。サイトは飲食サイトを参考に構築したのですが、今まで電話や手書き、FAXでの取引だったものがサイト上で完結できるため、「明日から無料で始められるDX」と銘打って広めているところです。
 

アスナロについて紹介する戸松さん。熱のこもった話に参加者も集中して耳を傾けていました。

戸松:今まで町工場に提案されてきたことは、「新しい顧客を探しなさい」、または「自社商品をつくりなさい」ということでした。でも、結婚相手をたくさんつくったら家庭は崩壊してしまいます。また、自社商品を誰もがやっていくことはそう簡単なことではありません。今までの主要顧客を大切にしながら、それでも継続できる枠組みはつくれないのか、そう考えた結果、空リソースをシェアして、既存の顧客の仕事の空きを埋めていくことに思い至りました。
我々、工場には、設備が故障した、仕事が一時的に減ったなど「困った今」がたびたび発生します。反面、「工場内にいつも稼働してない工程がある」ということもある。その空いているリソースを提供して、困っている方が依頼する。主要顧客を最優先にしながら、安定的に仕事を続けていけるようにするためのオープンイノベーションです。

アスナロは今、東海地方の製造業のうち15%が登録するサービスになっていますが、それは、実際には6倍ぐらいの密度で製造業が存在しているということでもあります。それなのに、お互いのことを知らない。これが現状におけるペインです。

そんな中で出会ったのが、I-OPEN Centralの共創ハンズオンプログラムでした。参加してみると、自分がかなり“コンテスト擦れ”していることに気づきました。コンテストでプレゼンテーションに立つと必ず質疑があって、「この事業の穴は何だ」と聞かれるのを期待していたり、逆に怖かったりしていました。ところがI-OPEN Centralはそうではなくて、どうやったらこの事業がうまくいくんだろう、自分の強みってここに使えるんじゃないかといった、そういう提案をするセッションでした。圧倒的なほど無責任に応援する、心理的安全性の高いイベントだったんです。

そしてもう一つ素晴らしかったのが、アジェンダオーナー同士の繋がりです。業界や地域、事業の進行度合いもアジェンダオーナーによって違います。そんな人同士が「こんなことできるよね」や「こんなことで悩んでるよ」という共有ができるところはとても面白かったです。実際に、参加者の提案から具体的な支援もいただきました。「プロダクトデザインをできる会社をつくっていく必要がある」というご提案があり、共創のパートナーを紹介いただきました。「アスナロ」はマーケティングも一つの課題としてあったのですが、プロジェクト型で専門家を採用できる企業も紹介いただき、実際に4月から採用する方向で動いています。


toCの世界のビジネスをtoBにも展開。課題の先に見える可能性とは。

吉澤:ありがとうございました。町工場のお話でしたけれども、跡継ぎの皆さんと普段話されてる岩田さん、いかがでしたか。

岩田:戸松さんのおっしゃる通りで、例えば尾州の繊維産業も、分業体制です。紡績って、糸を作るところと織りはよく知られていると思うのですが、その間には撚糸と言って糸と糸を撚り合わせるという工程があります。しかも一次撚糸と二次撚糸ってだいたい別の会社が請け負っていて、2、3年前に撚糸が足りないと盛んに言われていた時期がありました。
やっぱり、シェアリングをやるべきだよねっていう議論が出ていました。ただ議論は出ても、実際にどこの撚糸屋さんが今何台ぐらい機械を持っていて、何人ぐらい稼働できる社員がいて、かつその日・その週に空いてるのか、みたいなことまでは誰もわからない。商工会議所も、市も、誰もわからないんです。みたいな話で言うと、めちゃくちゃ意味がある話だと思いました。
ただ、オープンにして広げていくことがノイズになってしまわないか、というところは気になります。みんなで食事をするようなシーンがあったとして、大手メーカーにとっては情報量が多いことよりも、ある物事に特化して詳しい方のほうが嬉しいみたいな、そういうところがあったりするのかなと想像します。

戸松:非常に的を射たフィードバックだと思います。ただ弊社の場合だと、専門性の高い技術に特化したほうがいい部分もあれば、ふるさと納税みたいに箪笥から肉まであるみたいな状態がものづくりの技術になっている部分もあり、それを小分けにしすぎると横のつながりがつくれないようなところがあります。ものづくりって、工業だけじゃなくて、工芸的な部分や美術的な部分も存在しています。漆塗りなどの伝統工芸や、欄間彫りといってお寺の木彫りをするような技術です。
そこに発生する悩みは、お寺市場ってこれから増えるか減るかっていったときに、そんなに増えないことです。でもこの技術は面白いから誰か使ってよ、と。自社で製品をつくるほどのモチベーションを持っていない人たちも含めてクロッシングする、すなわち横串が刺せると面白いなとの想いで、弊社もアスナロも動いています。
 

町工場に存在する課題を解決するために立ち上がった戸松さん


細田:ものすごく面白い事例だなと思いました。「シェアリングエコノミー」と言ってしまえばそれまでかもしれないですけど、toCのシェアリングエコノミーがtoBの製造業の一番深いところでやっていく。これまでそこに注目して力をかけることがなかったのかなって、それがまず一つ驚きだったんですけど、どうですか。

戸松:それには難しい部分がありまして。例えば宿泊において、星野リゾートに泊まりたいと思えば名指しで検索することになります。対してビジネスユースで特定の地域のビジネスホテルに泊まりたいと思ったら、「日時 場所 ホテル」で検索して、そこで出てきたホテルに泊まることになると思います。シェアリングは後者になりますが、あくまでtoCだからスムーズにいくようなところがあって、toBだとそう簡単にはいきません。「春日井 溶接」と検索したときに丸菱製作所が出てきたとしても、大手はよく知らない中小企業に対してトラブルを懸念しますし、逆にスタートアップ企業は相手がすぐにスケールアップするような事業ではないことを敬遠しがちですから。

細田:参入障壁がある程度あるということですね。でも、そう考えてみると単なるマッチングでもないなって思いました。シェアリングエコノミーのこの先の可能性は、今まで埋もれていた、いわゆる暗黙知的で見えなかった技術の可視化をすることにある気がしました。これまで機械やプロセスの検索エンジンによって会社や部品を探すことができたわけですが、さらに、「技術」を検索できる場所になったらすごく可能性が広がるように思います。
スタートアップって、アイデアはあるけどハードウェアの技術がないことが多いです。それで小ロットから受け入れてくるところを探して、中国にいくようなことはよくあります。そこを、言葉の障壁もない国内で、しかもこんなに近くにあったんだって気づけるだけで、全然変わるんじゃないかなと思いました。

戸松:そうですね。実際に、スタートアップ企業のペインで、ソフトウェアもプロダクトのイメージもつくって、さあどこでつくろうかと相談しているうちに中国で試作して、そのまま中国で量産し始めて、知らないうちにメイドインジャパンブランドじゃなくなってしまったという話を聞いたことがあります。何でそうなったのかを聞くと、頼むところがなかったと。でも本当は、頼み方がわからなかったんだと思うんです。それって、そのためのインフラがなかったことが大きいんじゃないかなと。サプライヤーは大手に属している方が多いので、量産を始めようと思ったら量産もできる会社ですから、つながることができれば量産まで到達できる。なので、細田さんのおっしゃるように活用してもらえたら、非常に面白いなと感じます。


AIを使ったコンサルティングで「三方よし」を狙えるか

岩田:戸松さんは、特許ないし商標をアスナロで取られているんですか。

戸松:ビジネスモデルで特許を取ろうと思って出願はしたのですが、なかなかうまくいかず。特許自体はアスナロでは取っていない状態です。

岩田:何をどういうポイントで取得すると、今後の競争や拡大にいきそうか、会場にいる弁理士さんにいきなりですが、伺いたい。


参加者(弁理士):なかなか難しい問題です。ただ、どんな検索をしようとしているのかというデータの蓄積を使って探しやすさを変えていくという部分に、技術があるのかなと思ったりもするんですけれども。

戸松:最初に出願した内容は、ホテルに置き換えると部屋、オープンテーブルだったら席というようなところです。普通のECサイトだったら在庫は商品の数となりますが、弊社でやっている空き状況は、空いてる・空いてないというのを数値化して、それを在庫として検索する仕組みです。その考え方で特許を出願してみたのですが、うまくいきませんでした。

参加者:細田さんの「技術を探し出す」という観点が非常に面白かったなと思っておりまして。でも結局、いろいろな技術をピンポイントで探すことってすごく難しい。なぜなら多くの人が、探したい技術が具体的にあるわけではなくて、おそらくこういう技術を探したいという感じなのかなって。そういうところのアルゴリズムを考えて、ひねり出せるといいなのかなって感じました。

細田:実は僕も、アスナロを拝見したとき、理念もモデルもすごく素晴らしい一方で、本当に求める加工技術を探せるのかな、写真だけでは探しづらそうだな、掲載されている機械だけでわかるのかなって、少し感じていたところがありました。

セッションは参加者も発言を行う対話式で行われました。会場には、「I-OPEN Central GIFU Session」と「I-OPEN Central MIE Session」のゲスト、ニッケンかみそり株式会社 常務取締役の熊田征純さんの姿も


岩田:さきほど戸松さんが飲食店のサイトを参考にされたと言っていましたが、そこが実は、一番のウィークポイントかもしれないです。やっぱり、AI活用しなきゃいけないんじゃないですかと。ユーザーは「こういう技術でこういうのをつくりたい、それでこういうことなのかなって思うけれど、どうだろう」みたいなことまで話せて、「あなたのニーズを満たすには3つの提案があります」といった回答がサイトから出てくるような、対話型のほうがいいかもわからないですね。

吉澤:技術という暗黙知を可視化していくとなったときに、そのシステムを入れる側は、具体的に何を入れていけばいいのかっていうのはすごく悩みそうなポイントに感じました。私はこの仕事の前にECの仕事をしていたんですけど、ECって実は、ECコンサルタントのほうで儲かっているみたいな話があって。例えば楽天が商品を売るとき、手数料で儲かっているところよりも、こういうページを作ったほうがいいよとか、こういうデータあるからこういうふうにしたほうがいいよといったコンサルタントのが粗利率が高い。そこにもまた、ビジネスが存在しているんですよね。

自身の経験も交えながら対話を次へとつなぐモデレーターの吉澤さん


戸松:まさに「カスタマーサクセス」部門ですね。弊社も、顧客に対してコンサルティングができ、それによってプラスαの値段がついてくると、サブスクのように決まった値段で戦っているところにとってもビジネスチャンスがありそうだと感じます。具体的にはどうしたらいいのか、ぜひアドバイスをいただきたいです。

細田:例えばメルカリは、出品する物を写真で撮ると、AIが売れるための文章を書いてくれます。かつては自分で書かなければならず手間でしたが、今はもうAIが書いてくれて、そのまま出品できます。探す側だけでなく出品者側も助けているわけです。機械の写真や使い方のプロセスをAIに見せておき、それをAIが応用してくれるような、出品者側へのECコンサルタント的なことを入れていくこともできそうです。

戸松:非常に面白いお話です。それに加えて、実際に運営していると、例えば、技術についての情報がほとんどないような出品者への利用が集中するようなことがあります。もしかしたら技術以上に、「頼むと敷居が高そうな会社よりも何か言ったらやってくれるんじゃないか」という可能性に価値を見ているんじゃないかなっていうところもあって。コンサルティングにおいて非常に面白い側面であると同時に、ユーザーの求める価値を把握していく必要がありそうです。


「期」は財務上の概念に過ぎない。エコノミーは「ウェーブ」でつないでいく

吉澤:以前、I-OPEN Centralの工場見学時に、「うちは技術者いるから試しにつくれちゃうんだよ」みたいな話があったのですが、今の話はそれに近そうだと感じました。とても興味深いお話でした。最後に、共創ハンズオンプログラムの今後について、思うことがございましたらお聞かせいただけますか。

戸松:共創ハンズオンに参加する中で、他のアジェンダオーナーの商品を買って、「面白いよ」って僕自身も広告塔になって広げるようなことがありました。業界もまったく違うんですけれども、アジェンダオーナーにつながることで、それぞれ違う業界に広めていってくれる部分があるなと。なので、1期目が終わったから解散、という単純なものではなくて、これからもつながっていけるといいなと感じています。半期のプログラムで毎月いろいろなところに行かせていただいてきましたが、それだけで今すぐ実績にするのはちょっと難しい。だからこそ、これで終わりではなく、自分のような過去のアジェンダオーナーをレガシーとしてまた使い回していただきたいと思っています。

岩田:完全に同意です。ものづくりもそうですけど、蓄積されていくところにこそ価値がある。特許もそうだと思うんです。一つの特許で全部網羅するわけじゃなくて、この特許とこの特許を組み合わせて新しいものを生んでいく。そういう蓄積ってすごく大事だと思っています。戸松さんがおっしゃる通り、1期目と2期目をどう接続していくかというところは、プロジェクトをやっていく上での重要な示唆だと思います。

細田:つながる方法って今はいくらでもあって、ソーシャルメディアでつながるだけでもひょっとしたら何か担保されるかもしれない。そんな現代においては、そもそも1期、2期という概念を捨てたらいいのかなっていう気がしています。「期」というのは財務上の話であって、スタートアップエコノミーをつくっていくのに期があるのかって考えたら、多分ないんじゃないかな。ちょっとカッコつけすぎかもしれないですが、「ウェーブ」に置き換えるのはどうでしょう(笑)。ファーストウェーブがあって、セカンドウェーブでこう続いていくみたいに、ウェーブだと続いていきますよね。

戸松:いいですね。当初、「何が起こるかわからない」ことに期待してI-OPEN Centralに参加しようと決めました。それは今も同じで、むしろ一番期待するところです。アジェンダオーナーとして参加して、今後もつながりが続いていくことを望んでいます。


「中部エリアに連帯感を生む」。改めて今振り返る、I-OPEN Centralへの想い

戸松さんも交えた「想いの実走プロセス」についてのセッションの後、テーマは「熱意のバトンをつなぐ『次なる問い』の対話」へと移行しました。

公開企画会議「熱意のバトンをつなぐ『次なる問い』の対話」でのひとコマ


吉澤:ここまで、中部経済産業局の管轄である愛知、三重、岐阜、富山、石川でセッションを行ってきました。各回、バトンをつなぐ形式で2人のゲストをお呼びしていましたが、この方式は岩田さんとの会話から生まれたものです。岩田さん、あの時の想いを改めて今、お聞かせいただけますか。

岩田:まず、いろいろな人や会社がたくさんある中で、「これが答えだからこれをやれ」みたいな話ではないと考えていました。また、特許庁のミッションにある「何かを発揮したい社会」のところもすごく好きで。社会ではなく、まず個人のやる気のところにフォーカスを当てていて、そのための環境づくりに注力したいということなんです。それならなお、異なる2社がいることで、知恵を相対化して消化しやすくできるのではないかと思いました。

I-OPEN Central MIE Sessionにて。熱心に会話を進めるゲストの2人。右からニッケンかみそり株式会社 常務取締役の熊田征純さん、IXデジタル株式会社 代表取締役社長の神山大輔さん


ゲストはバトン形式で毎回2人。「I-OPEN Central MIE Session」で会場にもなったIXデジタルの神山大輔さんは、一つ前の「I-OPEN Central TOYAMA Session」で三郎丸蒸留所を訪問。三郎丸蒸留所の稲垣貴彦さんとセッションした。

 

岩田:さらにもう一つ理由があって。細田さん、中部ってどの辺が中部だと思いますか。

細田:地理を勉強しても毎回わからなくなります。何となく愛知らへんだよねと思うんですけど、結構、北陸の方も含んでいるじゃないですか。

岩田:まさにそこで。中部っていろいろなエリアがあって、結束力の弱い地域だと思っていたことがもう一つの理由です。例えば岐阜県の真ん中には高い山々があって、岐阜県内でも南と北であまり交流する機会がありません。岐阜県北部の人にとってはむしろ富山県の人が友達みたいな感じがあったりするし。愛知県も東三河の人は浜松が友達みたいな感じで、よくわからない。I-OPEN Centralでせっかく中部の全県を回るのだから、それぞれが友達関係になることができたら面白いなと思ったんです。そして、友達になるって相互的なものですよね。自分のところに来てもらうだけだとそれで終わりだけど、そこに行って来たが加わると関係性がかなり違ったものになってくる。I-OPEN Centralが中部全体の基地になれるのではないかとの期待から、バトンを渡すスタイルにしました。

吉澤:各セッションには、工場見学も必ずつけていました。工場の見学をして、ゲストのトークを聞き、最後に交流会までやるっていう、プログラム構成もすごくよかったなと思っています。言語を超えて共有する何かが、来た人たちの中で生まれているような感じがありました。


写真は「I-OPEN Central TOYAMA Session」にて。トークセッションの前には、会場でもあった三郎丸蒸留所の見学が実施された。


細田:どういうときに連帯感は生まれるのかっていうことなんですよね。信頼って、必ずしも向き合って話しているときに生まれているわけじゃなくて、それよりも、一緒に何かに注目する「共同注視」がすごく大事といわれています。一対一なら向き合っていればいいですけど、皆が一つものに向き合っている状態、これをつくるって実はすごく集団に対して効果があります。プレイベントでは焚火もしましたよね。一つのものを一緒に見て、一緒に感じて、意見をシェアすることは、一つのつながりをつくるためにも意味があると思います。そこから出てくる洞察って、画像や映像を見ただけでは絶対出てこないことなんじゃないかなと思うので、足から始めて最後に頭で出していく、素晴らしいプログラムだと思います。


プレイベント「I-OPEN Central公開企画会議」では、参加者と一緒に焚火を囲みながら交流した。


オープンに内包される重要事項「3つのPR」

吉澤:先ほどオープンイノベーションのお話がありましたが、プレイベントの企画会議では「プロモーション」と「プロテクション」という言葉も出ていました。僕らI-OPEN Centralが大事にしていた言葉でもあります。オープンイノベーションが大事だとなって始める人が増えてきた中で、実はただオープンにすればいいだけじゃないんじゃないか、みたいな話だったと記憶しているんですけども。

岩田:僕は、どちらかというと、アイデア自体に価値はないと考えている派です。アイデアはいろいろな人が思いつくけど、それを実行することにこそ価値があると考える派。だから僕はいろいろな人と話をして、その中で出てきたものをブラッシュアップしてきたという感覚があります。
同時に、この世の中、いい人ばかりではないということも、この年になってくるとわかってくるものです。だからといって守り路線になるのは違うと思っていたときに、「オープンにするためにプロテクションする」という考え方がすごく腹落ちしました。守るために守るじゃなくて、攻めるために守るということです。企業経営者の中には、「真似されてしまうから特許は出しません」という方がいます。完全に隠してしまう。でも実は、パテント(特許)自体が、オープンにすることなんですよね。まさに、守りながら攻める。ロックしてクローズする人ってすごく多い印象ですが、でもたぶん、話せばそうじゃないんです。やっぱり、コミュニケーションをとっていくってすごく意味があるんじゃないかなっていうのは、今日の話も含めて思いました。

「守るために守るじゃなくて、攻めるために守るんだ」と岩田さん


細田:そこにもう一つ、僕はプロモーション(PR)があると思っていて。知的財産や特許を取ると、プライドが芽生えるんじゃないかなと。自分の会社にはこんな特許があるんだと誇れることは、プロモーションをしていく上でも実はすごく意味があることだと思っています。生産設備の話に限らずですが、それこそ先ほどのアスナロで、公開できるものがたくさんあるとなったら、それって誇らしいことでもありますよね。

吉澤:開くんだけど守るということを通して、プライドが醸成される。

岩田:すごい。皆さん覚えて帰りましょう。「プロテクション(Protection)」「プロモーション(Promotion)」「プライド(Pride)」


I-OPEN Centralで生まれたキーワード、「越境」から「再読」、そして「発信」

吉澤:さて、これまでの活動で、共通して出てきた言葉がありました。

1つ目は「越境」。素晴らしい経営者の方々がお話をされてきた中で、皆さんやはり1回は外を見ているし、戻ってきた後も常に動きながら外を見ている。リーダーは越境することで新たな視点を獲得しているということがわかりました。

2つ目が「再読」。conomichiでよく使う言葉でもあるのですが、もう一度読み直すことで、自分たちの持っている価値を捉え直すことが大事だということ。越境をすることが再読につながり、新しいビジネスやプロダクトが生まれていっているということが、皆さんの話から見えてきました。

3つ目は、全員が共通して「発信」のお話をされていました。広告費をガンガン使っていくっていう話ではなくて、旗を立てることで仲間をつくるとだったことが印象的です。社外もそうですが、発信をしていくことによって、社内の仲間もどんどん増えていく。すべての会に参加されて、岩田さんはこの辺りについてどんな感覚をお持ちですか。

岩田:改めて言語化していただけると、確かに共通していましたね。「I-OPEN Central AICHI Session」でお招きした株式会社生方製作所 代表取締役社長の生方眞之介さんは、「人の命を守るサイレントヒーロー」を掲げて、エアコンなどのセーフティ装置をつくっていました。シェアがめちゃくちゃ高くて、100億円の売り上げのうち既存事業が90何億円。それでも、女性社員が活躍する場をつくりたいと言って、防災グッズをつくった。今、それが売れに売れていて、だから100億円に到達したという話をしてくださっていました。生方さんも、1回は自社じゃないところに行っているんですよね。

昨年開催された「I-OPEN Central AICHI Session」の様子。株式会社生方製作所の生方さんは、「守らなければならないのは間違いなく会社のアイデンティティ。それは製品を通じて人の命を守ること」と話していました


岩田:オープンファクトリーとしてメディアにもたくさん出ている梶グループの梶さんは発信のお話をされていましたよね。繊維業界で、日本で一番細い糸を扱った合成繊維の生地をつくっていて、見せる前提で70億円をかけて新しい工場をつくった。何のためにやっているのかっていうと、社員のプライドを高めることと、単価=価値を高めていくためなんですよね。

吉澤:「工場をメディア化するのはすごくお金がかかることで、すぐには回収できないんだけど、未来への投資なんだ」と話されていましたね。

オープンファクトリー「KAJI FACTORY PARK」。「I-OPEN Central 石川Session」にて実施されたファクトリーツアーの様子から


岩田:控え室で梶さんと話したときに、「工場見学で学べる人とそうでない人の差ってどこで生まれるんですか」と聞いたんですけど。工場というと生産性に目が向きがちですが、それだけじゃなくて、例えば張り紙一枚見てもどう安全対策しているのかなって見たり、事務所にかかわる人なら事務所はどうつくっているのかを見たり、事務所に貼ってある人員の割り振り表を見て人をどういうふうに働かせているのかとか、そういうところまで見られる人だとおっしゃっていて。すごく面白いなと思いながら聞いていました。

細田:僕は工場見学に行くと、そこで交わされている言葉が気になります。独特の言葉がいっぱいあるところには独特の技術や独特のやり方があるもので、興味からつい聞き耳を立ててしまいます。あと、だいたい張り紙になっている言葉って、できていないことなんですよね。「チームワークを大事にしよう」という張り紙があったら、チームワークに課題がある。裏を読むみたいなことも含めて、人によって全然違うレンズで見ているというお話でしたよね。

「カジグループ」代表取締役社長の梶政隆さん。「KAJI FACTORY PARK」にて実施された「I-OPEN Central 石川Session」より


オーセンティシティへの関心が高まる昨今、フィールドワークは欠かせないものに

吉澤:実は、このセッション用に問いを一つ立ててきました。「越境と再読」を進めていくには、どんなフィールドリサーチが必要だと思いますか。なんでいきなりフィールドリサーチが出てきたかというと、もともとI-OPEN Centralのプロジェクトは特許庁でやられているもので、コロナ禍のときに始まったこともあって結構オンラインが中心なんです。そうした状況の中で、I-OPEN Centralを中部でやる意味って何なのかを考えたとき、製造業が強く、現場をしっかり持っているということに思い当たりました。I-OPEN Centralに参加する人は実際に足を運ぶことができ、フィールドを生かすことで、次の行動にもつながっていくプロジェクトにできるのでは、との考えからなんです。I-OPEN Centralを未来につなぐ問いとして、いかがでしょうか。

岩田:細田さんに聞きたいのですが、国内外の超トップブランドのブランディングをやるときに、どれぐらいのフィールドリサーチをするんですか。例えばアップル社が何か考えるときって、兆円の世界じゃないですか。数字だけ見て決めているのか、マーケットリサーチなのか、トップの世界がフィールドリサーチや現場をどう見ているのかってすごく知りたいです。

細田:アップル社など機密が多い会社はブラックボックスを守っています。なので、私たちの知るところはかなり限定的になるんですけども、やっぱり最近は、工場見学みたいなものをすごく大事にされるところが多いです。数年前に、アメリカで「オーセンティシティ(本物らしさ)」という言葉が今年の単語的なキーワードになりました。本物らしさはフェイクの対義語です。フェイクニュースをはじめ、いろいろなものが何でもフェイクでつくれてしまう。そういう時代に、本当にクオリティの高いものを手作業で、いい環境で追求して、そのエリアで愛されている状況を見て感じることは、すごく大事になってきています。「現地に行って、その地域や工場、そこで働く人に触れてからブランドのエッセンスを読み解いてください」と言っていただくことがすごく多くなっていますし、実際とても大切なことだと考えています。

「状況を見て感じることがすごく大事になってきている」と細田さん。その上で、「エコシステムとして見ないと見誤る」との話もしていました


細田:また、フィールドリサーチのときに工場もすごく大事だと思うんですけど、僕が最近思うのは、工場の外側もすごく大事だということ。例えば去年、旭川に行かせてもらったんですけど、家具メーカーだけではなくて、デザイナーがいて、そもそも林業の集積地帯があり、それを運ぶ運送会社があって、そこから全国に家具を輸送できるトラックが何台もあって、さらに職人を養成する専門学校があるっていう。
やっぱり、エコシステムとして見ないと見誤ることってあると思うんです。例えばデザインがイケてることだけを取り出して他のところに転用しようと思っても、それは無理で。エコシステムを理解して、地の利を理解して、そのカルチャーを理解して、初めて応用可能になると思うんです。岩田さんは地域産業ごと見るツアーをやっていますよね。そういうコンテキスト(文脈)も含めた理解の仕方ってすごく大事で、インスピレーションもそこにあるんじゃないかなという気がしています。


ストーリーテリングでつくり出される価値。「地域」がポイントに

吉澤:各地を回ったときに出た話で、自分たちがする発信も大事だけど、「発信してもらえるような見せ方をどうやったらできるか」といった話が出ていました。コンテキストをどうやって自分たちの発信に盛り込んでいくか、そもそも自分たちの事業にどう生かしていくかみたいなことがすごく大事だけど、すごく難しいことでもあるのかなと感じています。

細田:ファッション業界の例だと、「ブルネロ・クチネリ」というブランドの商品は、「世界で一番幸せな村」といわれるイタリアのソロメオ村でつくられています。商品そのものだけでなく、従業員たちの働き方も含めて、地域の幸せのストーリーから編み上げてものにしています。だから生地はものすごく価値があるんだっていう。世界で一番高くて、高価なブランドの価値は、ストーリーテリングにあるわけです。

岩田:ブルネロ・クチネリは、ロゴもついていなくてTシャツ10万円みたいな世界。村にエンターテイメントがないからって、村の人たちのために劇場兼オペラハウスを建設することもしていたりするんですよね。

細田:今はどんどんブランドの単位、主語が変わってきているのを感じていて、どう変わっているかというと、企業名よりも地名になってきているんです。ファッションやビューティーが顕著ですけど、資生堂銀座、メイベリンニューヨーク、ロレアルパリなども、実は地名が一番大事な部分になっている。ブルゴーニュなどワインも地名ですし、アップル社も“Design in California”の記載で地名を背負っています。ブルネロ・クチネリのように、その地域の幸福とその地域の正しさ、愛され方が、そのまま商品の愛され方になってくるのだと思います。

岩田:企業も、会社の収益を上げることが一番の責任だとは思うけれど、それだけじゃ頑張れないところもあるじゃないですか。そういうときに、地域に対して少しでもいいことをやっているっていうプライドが頑張りの源泉になったりする。地域と会社がウィンウィンな関係性をつくれるといいのかもしれないですね。I-OPEN Centralも、特許や知的財産のためだけではなくて、これをきっかけに地域や社会が元気になるプロジェクトに育っていってほしいですね。

細田:本当にそうだと思います。オープンだけど、この地域のためにと限定すると、それはある種のクローズ。ストーリーをつくっていくっていう意味では、オープンを何の縄張りのために使うのかっていう意識も、どこかで必要なのかもしれませんね。

岩田:I-OPEN Centralは、特許や商標を取る前のアイデアづくりをしっかり特許庁として応援しようっていう話ですが、そこに地域性という掛け算が一つ関わることで、特許とか商標が実は町づくりの一助になるかもしれないとなったら、すごく可能性を感じますよね。人口も減っていく中で、資源は不足している。とすると、こっちをやっていると実はこっちにも、さらにこっちにもっていう設計が、すごく重要なんだろうなっていうのを感じました。

細田:そういう意味では、地域っていい単位なのかもしれない。国だと遅すぎる、企業だと弱すぎるっていうときに、ある程度のまとまりとして、地域で一つの企業のように振る舞ってみる。その役割分担を効率化していくことができると、実はすごく強いのかもしれないなと思いました。


吉澤:地域を語るときって市町村単位になりがちだと思うのですが、中部経済産業局という名前があることによって、例えば尾州だったら一宮市と羽島市で一緒にやっても、愛知と岐阜でやっても全然変じゃなかったりできるのはすごくいいことだと思いました。この1年やってみて、I-OPEN Centralで見たものや教えていただいたことを、自分のビジネスや想いのところに掛け合わせて実際に行動に移すのは、すごく難しいなっていうところも感じていました。それについて今、どういう仕組みをつくっていけばいいのか、見る視点を増やしていくみたいなことが大事なのかなって思ったんですけど、細田さんはそこの考えとかありますか。

細田:リサーチなどでいろいろなところに行くと、やっぱり課題から入りがちなのですが、課題を見つけて解決しようとするって、結構難しいんです。難題ですから。なので、課題解決ではなくて、この可能性を解放してあげようと、リフレームさせることをします。負の循環を断ち切るという切り口ではなくて、既にあるものに目をつけて、それができてないことにおいて背中を押す感じなので、議論も前向きになります。「何ができるか」という問いにするだけで、具体的なアクションに落ちやすいと個人的には感じています。

吉澤:岩田さんも「課題解決は未来のことを語ったほうがいいんだ」という話をよくされていますけど、解放と聞いていかがですか。

岩田:そもそも初めましての人に「君たちの課題はこれだ」って言われたらいい気持ちはしないですよね。尾州もよく言われるんです。「せっかく尾州というエリアが生き残っているのに仲悪いですよね」と。急にそんなこと言われてもみたいな感じで(笑)。ただ一方で、気にかけてくれているということでもあると思うので、そういうときは、具体的にぜひ知りたいですと返すようにしています。せっかく来てくれたのだから、純粋に聞きたいとも思いますし。やっぱり、第一歩って大事で。今日も、これだけの人がこうやって集まって、長い時間前向きな話をお互いにし合えるっていう、すごく価値があることだと思うんです。あとは、とにかくアクション。アクションを一つするたびに自分の中の熱量が上がっていくので、その積み重ねだなって。だからさっきのウェーブの話は本当によかったです。

会話はいつも建設的。I-OPEN Centralで大切にしてきたことの一つです。そうしてセッションも、いよいよ終盤へ


様々にある「大きくしたい」の意味を特定することが突破口に。ヒントはI-OPEN Centralにあり

吉澤:細田さんは、企業のお仕事をされる中で自分たちのサービスを大きくしていきたいみたいな相談をされると思うんですけど、そういうときはどういう返答をされているんですか。

細田:大きくするもいろいろあると思うんです。スケールとしての大きいものあれば、インパクトや影響力の大きさもあると思っていて。いたずらにスケール、サイズ感を求めるのではなくて、アクションがもたらすニュースの影響力やそれがもたらすインスピレーションの影響力っていうのを考えたほうがいいのかなということは話します。
例に出すと、北海道の猿払村というホタテがたくさんとれる町があって、そこでは廃棄貝殻が問題になっていました。他方で、大阪の企業が卵の殻をプラスチックに変える技術を持っていますと発信していました。卵でいけるなら貝殻もいけるんじゃないかっていう謎の文系志向でいろいろアプローチしてみたら「いけるぞ」となった。大阪大学の方に実証してもらって、貝殻から生まれるヘルメットをつくったんですね。シェルだから「シェルメット」って、ダジャレなんですけど(笑)。でもそれが、すごく美しくデザインされていたので、いきなりポルトガルの美術館に展示されて、どんどん話題になって広がっていったんです。一緒にやりましょうって言ってくれた商社の方から、「貝殻から作るプラスチックでいきなり人の命を守るヘルメットなんて普通やらないんです」と言われました。お皿とか、もっと無難なものからやっていくところをヘルメット、という面白さがあって広がった。今ではさらにいろいろなものに使われ始めて、コンクリートに混ぜて建材にもなっています。スケールではなくてインパクトのほうが先に出たんですよね。それでビジネスがついてくるっていうのがあるので、ひょっとすると、大きさの意味をちょっとだけ特定してあげるだけで変わるのかなっていう気がします。

吉澤:I-OPEN Centralのそもそもの話は知的財産をどう活用していくかみたいなところですが、その手前部分に取り組むことで価値を波及させることができる。アジェンダオーナーからしたら自分たちのビジネスや想いが形になることに価値があるし、主催している側からすると、こんなところに波及して新しい価値が生まれていくことに価値がある。もしかしたらその部分を、来年度より深くやっていけるといいのかなと思いました。

細田:そうですね。行政はこれまで、上から落としていく「滝モデル」でしたけど、これからは「渦モデル」に変わっていくと思うんです。ボトムアップで、いろいろな人が巻き込まれていって渦が生まれていく。まさに渦を起こすのにI-OPEN Central、中部というのはふさわしいと思います。ルールをちゃんと設定して、真ん中から日本を変えて世界を変えていく、何かそういう動きになっていったら素晴らしいなと思います。

吉澤:岩田さんはいかがですか。

岩田:改めて、まず地域の住民が幸せであるといいな、ということを思いました。もしオープンファクトリーがある町の住民のシビックプライドが他のない街より高かったら、僕たちがものづくりをしているという意味がまた増える。意味が増えることで何かをもっと頑張れる。そう仮説を立てると、何かはどんどん広がって、住民はもちろん、行政も他の企業も、皆がやりたいことにうまく乗れる場所によりなっていくのかなと思いました。

吉澤:岩田さん、細田さん、そしてここまでI-OPEN Centralにご協力、ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。


こうして、I-OPEN Centralの第1期は終了となりました。セカンドウェーブ、サードウェーブと続いてくこれからが楽しみです。

「ありがとうございました!」


登壇者プロフィール

岩田 真吾 三星グループ 代表
細田 高広 TBWA\HAKUHODO チーフ・クリエイティブ・オフィサー 取締役兼執行役員
吉澤 克哉 東海旅客鉄道株式会社 事業推進本部 係長 / conomichiプロデューサー

文=川本 央子


conomichiでは

【conomichi(コノミチ)】は、
「co(「共に」を意味する接頭辞)」と「michi(未知・道)」を組み合わせた造語です。

訪れる人と地域が未知なる道を一緒に歩んで元気になっていく、「この道」の先の未知なる価値を共に創り地域に新たな人や想いを運ぶ、そんな姿から名付けました。

今まで知らなかった場所へ出かけて、その地域の風土や歴史・文化にふれ、その地域の人々と共に何かを生み出すこと。そこには好奇心を満たしてくれる体験があふれています。

地域で頑張るプレイヤーの、一風変わったコンテンツの数々。
まずは気軽に参加してみませんか?

このページを見た方に
おすすめの取り組みレポート

このページを見た方に
おすすめのイベント

このページを見た方に
おすすめのインタビュー

FOLLOW US

ワクワクとつながる

  • facebook
  • instagram
  • mail