地域に愛される用宗駅

用宗駅舎の灯が消えた日

静岡市駿河区に、東海道本線の用宗駅があります。用宗駅は白い外壁にオレンジ色の屋根が良く映える、かわいらしいレトロな駅舎です。 外観の一番の特徴は駅舎からポツンと飛び出たステンドグラスのライト。このステンドグラスのライトは長きに渡って用宗駅と地域の シンボルとして街に暖かなやさしい光を届けてきました。2025年9月6日、そのステンドグラスのライトは役目を終え、灯を消しました。 今回は、用宗駅舎建替えに伴い、用宗地域の皆さまと作り上げた1日限りの特別なイベントとそのストーリーをご紹介します。



用宗という街

用宗駅は1909年(明治42年)11月1日に開業しました。用宗は戦国時代には「持舟」と表記されていた地名で、 「もちふね」が転訛して「もちむね」と呼ばれるようになりました。駅の北側にある山には由来となった「持舟城」の跡地が残っており、 用宗の街とその先に広がる駿河湾を一望できます。用宗駅から海岸までは歩いて10分ほど。駅から歩いて行ける用宗海岸は地元の方々から人気のスポットで、 毎年夏には多くの利用者で賑わいます。海水浴場のすぐ隣には用宗漁港があります。用宗漁港では毎日、名物のしらす漁が行われています。 豊かな自然が育に育まれた鮮度が命の「生しらす」をぜひ、用宗で召し上がってみてください。

地域の方と作り上げるイベント

用宗駅の旧駅舎は1936年に建設された後、1995年にリニューアルし、2025年8月31日まで89年間に渡ってお客様にご利用いただきました。 老朽化に伴い、駅舎の建替えを計画していたところ、静岡市並びに地域の有志で構成される団体「用宗を楽しくする会」の皆様から、 建替え前の最後に旧駅舎を利用したイベントを実施できないかご提案いただきました。そこで地元の小学生を招待し、 普段は公開していない駅舎の見学会を実施しました。通常見ることのできない様々な設備や制服の着用に、子供たちの目はとても輝いていました。 夜には駅舎の一般開放に加え、駅前でキッチンカーによる出店や盆踊り大会が開催され、慣れ親しんだ駅舎の最後の姿を見ようと多くの方が集まり、 晩夏の用宗を盛り上げました。         



地域と歩む、新しい駅舎

19時を過ぎたころ、「3.2.1...」というカウントダウンとともに、ステンドグラスの灯が消えました。滅灯を見守った地域の方々のあたたかな拍手に包まれて、 旧駅舎がその役目を終えた瞬間です。イベント終了後、片づけをするために旧駅舎に戻った私たちは思わず笑みをこぼしました。 旧駅舎の壁いっぱい、皆様からのメッセージで埋め尽くされていたのです。かつて通勤で利用していたお父さん、現在通学で毎日利用している高校生、 休みの日におばあちゃんの家へ行くために利用している子供たち、かつて父親が用宗駅員だった方、多くの思い出で壁が埋め尽くされていました。 地域に愛された用宗駅。姿を変えても皆様の毎日に寄り添う駅であり続けたいです。