浜松が誇る「天竜杉」

天竜杉という「アイデンティティ」

静岡県の西部に位置する浜松市はヤマハや河合楽器、ローランドなど多数の楽器メーカーが立地する「音楽の街」として知られています。 また世界的なオートバイメーカーである本田技研工業、スズキ、ヤマハ発動機の創業地でもあり、古くから産業の盛んな地域です。そんな浜松市には「林業」というもう一つのアイデンティティがあります。 実は当サイトで販売している「S-Gin211」には浜松市で伐採された天竜杉が使用されています。ジンに、杉?一見不思議に思えるジンと杉の出会い、今回は天竜杉をご紹介します。



歴史の中の天竜杉

浜松市の北部、かつて「天竜市」だった地域では全国的にも有名なブランド材「天竜杉」が育ちます。 天竜杉は、まっすぐに伸びた幹と緻密な年輪、高い加工性を誇り、古くから建築材や家具材として重宝されてきました。 天竜区の森林のおよそ90%を杉や桧の人工林が占め、「天竜美林」は日本三大人工美林の一つとしてその名を馳せています。 天竜杉の歩みは、自然林の時代から始まります。江戸時代には天竜川流域の豊富な森林資源が伐採され、筏に組まれて遠州灘へと流されました。 明治以降になると、国策として杉の大規模植林が進められ、住民の多くが林業やそれに関連する製造業、運送業などに従事しました。 天竜の経済・文化・歴史の中心にはまさに林業があったのです。       

天竜杉の役割

天竜杉は単なる木材ではありません。それは、天竜に暮らす方々の生業であり、愉しみであり、また地域経済を支えるインフラでもありました。 間伐や伐採を通じて雇用が生まれ、木材の搬出のために整備された森林鉄道やトラック輸送網が一層住民の暮らしを豊かにしました。 しかし、1970年代後半からは状況が一変します。木材の輸入自由化に伴い、東南アジアや北米から安価な木材が市場に流入したことで天竜杉の収益性が低下してしまいました。 これまで林業に従事していた方は職を移し、次第に山は放置されるようになっていきます。 現在ではさらに林業従事者の不足、高齢化が深刻な問題となっています。         



山と生きる「きこり」

適切に管理していない山は土砂災害や火事の危険性を高め、また豊かな生物多様性を破壊してしまう恐れがあります。天竜に移住し、そんな手つかずの山を買った方がいます 。Kicoroの前田剛志さんです。前田さんは自身が購入した2ヘクタールほどの土地を「木のこころ」という意味を込めて「Kicoroの森」と名付けました。普段は1人の「きこり」として林業に携わる傍ら、山林や森の魅力を伝えるイベントの開催など精力的な活動をしています。 林業を通して様々な人と触れ合う中で、前田さんはご自身の仕事を「山の価値を、まちの人へ届けること」と話します。       

ジンと天竜杉、不思議のランデブー

不思議なご縁があり、私たちと前田さんは出会いました。鉄道と林業、一見すると交わることのない2つの業種。その交点は、これまた不思議なクラフトジンというものでした。 別の仕事でお会いした私たちが雑談交じりにクラフトジンの構想をお話すると、前田さんが天竜杉の香りについて教えてくださいました。きっと、他にはない特別なジンになります、と。 そこから何度も試作を重ね、柑橘にお茶という静岡らしさ全開のジンの中に、天竜杉というどこか懐かしい香りが合わさった、唯一無二のクラフトジンが完成したのです。 今夜は大切な人との特別な時間に、天竜杉のやさしい香りとともに静岡を感じてみてはいかがでしょう。美しい天竜美林と、そこで営む“きこり”に想いを馳せながら。         



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