まず旅の初めに訪れたのは、串本海中公園。ここでは水族館にとどまらず、実際の海中の様子を見ることができる展望塔や水の中を探検できる観光船、そして海をとことん愛するスタッフと一緒に学ぶ「海の学校」など、さまざまな方向から南紀の海に触れることができる。
今回は生まれたばかりの海亀の赤ちゃんに触れた。バタバタと手足をばたつかせて元気いっぱい。真っ黒な瞳を覗き込むと、海亀からは私はどう映っているのだろう、できれば優しく見えると良いなあと思った。大きなヒトデを手に乗せたり、大きな海老の脱皮の殻を見たり!いつもはガラス越しに目を合わせている海の生物たちがぐっと身近になって、とても愛おしく感じる。
海中展望塔ではまあるい窓から実際の海の様子を覗いて「海の中にはこんなに沢山の魚が泳いでいるんだなあ」と当たり前だけれど、つい忘れてしまうことを改めて思ったりした。水族館のみももちろん良かったけれど、見て、触れて、体験して五感で海を感じることができる串本海中公園、予想以上に面白かった。今度は1人でもゆっくり訪れたい。
なんだか高いところから海を眺めたくなっておすすめされたのが本州最南端の地、潮岬。約10万㎡の大芝生が広がるこの場所は、その昔は海軍の物見櫓があったらしい。「地球の丸さを実感できますよ」とおすすめされて訪れた場所だったのだけれど、目の前の風景は孤を描いて太平洋が広がっていて、まさに「ああ、そういえば地球って丸かったんだっけなあ」としみじみ思ってしまった。普段普通に毎日を生きていると、どうしても視野が狭くなってしまう。地球がこうして丸くて、海の向こうには同じように人々の暮らしがあって、この先の空も繋がっている。そのことをいくら頭で理解していても、思い出さないのであればそれは知らないのと一緒な気がする。
水平線の、空と海との間に大型の船が行き交っていて、なんだかゆったりと泳ぐ知らない生物に見えた。
夕暮れ時には見事な夕焼けを望むこともできる。
後ろの予定は空っぽにして、この場所でゆっくり地球に思いを馳せてみるのもおすすめ。
大小40個あまりの岩が、列を成している姿なんて全国みても珍しいんじゃないか。その列の長さは850mもあって、規則的な並びが橋の杭に似ているから「橋杭岩」という名前がついたらしい。海の侵食で削られたこの岩の行列は、それぞれの形が個性的で見ていて飽きない。あっちの岩の方が好みかな、いやでもこっちの方が...と物色しているうちに時間がすぎてしまう。ずっと見ているとなんだか何かの形のようにも見えてきて、ひとつひとつオリジナルで名前をつけたくなってしまう。
休憩棟の屋上にあった看板を見ると、ちゃんとそれぞれに名前がついていた。ハサミやオオカミの名前がついている岩もあり、昔の人は想像力が豊かだなあと関心してしまう。
岩のそばにはソフトクリームなどの軽食やベンチもあって、旅の休憩スポットにも。
また、有名な朝日のスポットとしても愛されていて、多くの人が早起きしてこの岩に集まる。昼の姿も良いけれど、朝や夕方も岩が綺麗なシルエットになって美しいだろう。早起きして散歩する理由にしたい。
旅の醍醐味といえばお洒落なカフェで過ごす極上のスイーツタイム。南紀にもありました、素敵なカフェ。それが「古民家カフェcoyori」さん。築100年をこえる古民家を改装して作られたホテル「NIPPONIA HOTEL」に併設されていて、いわずもがな雰囲気は抜群。早速気になったスイーツを注文したのだけれど、どれも美味しそうで迷ってしまい...3種類全部注文してしまいました、欲張りでごめんなさい。その中でも特に気に入ったのがほうじ茶のババロア。甘すぎず、でも疲れた体にじんわり染みる。あまりの美味しさににこにこしながら一気になくなってしまった。
席もそれぞれがゆったりしていて、ソファもふかふか。入ってくる光も柔らかくて、ついうとうとしてしまいそうな心地よさ。
時期によってはドリンクのみの日もあるのでご注意。たどり着く道は少し迷ってしまったのだけれど、それもまた旅の醍醐味。良い散策になりました。
ああ、またあのババロアが食べたい...。
実はこの旅で一番楽しみにしていたのが、宿「ホテル浦島」。このホテル、浦島太郎の御伽噺さながら、なんと亀がお迎えにきてくれるのだ。昭和31年に開業以来大人から子供まで広く愛される「ホテル浦島」には、極上の温泉がある。館内には5種類の温泉があり、その中でも忘帰洞という洞窟の温泉は有名で、徳川家の末裔がその名をつけたとされている。約15mの巨大な洞窟内部に作られた温泉からは、太平洋の雄大な景色が見える。
部屋数はなんと404室もあり、私の泊まった「山上館」は、先も見えないような長い長いエスカレーターの先にあり、たどり着いたお部屋からは海が一望できるという天国のような、最高のエンターテイメント空間が待ち受けていた。これは友達同士でも盛り上がるに違いない。
館内で味わえる料理もまた絶品。海の幸てんこ盛りで、美味しすぎて途中から笑ってしまった。まるで竜宮城に迷い込んでしまったようだ。
紹介したいものがありすぎて何を書こうか迷ってしまうのだけれど、とにかく1泊じゃ足りない。3泊くらい泊まって思う存分施設内を探索し尽くしたい。
写真をひと目みた時から絶対に訪れてみたい場所があった。さまざまな条件が揃うと水面が鏡張りのようになり夢のような世界に変わる「天神崎」だ。
乾いた地面が徐々に満ち潮に飲み込まれ、しばらく見守っているとそこが静かで大きな水たまりになる。その上に立つと、自分の姿が水面に反射して、鏡のようになるのだ。
周りでは学生や恋人達、子供達が思い思いのポーズで写真を撮っている。
どうしても色んな天神崎を見てみたくて、昼間と夕暮れ時の2回訪れてみた。
昼間は水面がキラキラと太陽の光を吸い込み輝き、夕暮れ時は幻想的な姿を魅せてくれる。
写真好きにはたまらないスポットすぎて、気づけば数時間平気で滞在してしまった。
その日によって空の色も雲の形も違い、他の日も「今日は天神崎に行ったらどんな風に映るかな...」と気づけば虜になっていた。
これは近くに住んでしまったら平気で毎日通ってしまいそうだ。