vol.02 / 03
食と温泉、癒しを求める旅
新緑に囲まれた温泉、ノスタルジックなかき氷、瀞峡川の美しさを堪能する舟めぐり。癒し効果100%の心解ける旅
写真家・コラムニスト古性のちの南紀旅Vol.2は「食と温泉、癒しを求める旅」。南紀ならではのグルメや思いっきり心ほぐれる温泉まで、癒しの成分をたっぷり込めてお届けします。

文・写真

古性のち (こしょう・のち)

文・写真

古性のち (こしょう・のち)
BRIGHTLOGG,INC. 取締役
写真家・コラムニスト
BRIGHTLOGG,INC. 取締役
写真家・コラムニスト
1989年横浜生まれ。2016年から世界30カ国を旅し日本に帰国後、2021年より岡山県玉野市と東京の二拠点生活をスタート。現在約20万人のファンを抱える自身のSNSでは写真と言葉を組み合わせた作品の発表をはじめ、暮らしに関するコラムやエッセイを展開中。若い女性を中心に人気を集める。共著「 Instagramあたらしい商品写真のレシピ 」、2022年に初の単著を出版予定。
わたしにとって旅の最大の魅力でもあるグルメ。旅先ではどうしてもついジャンキーなものを食べすぎてしまって後悔したりもするけれど、南紀の食事はどれも心や体に優しくしてくれるものが多い気がする。最高の温泉効果も合わさって気分は極楽。とにかく、癒し成分100%の旅だった。
ブルービーチ那智でまぐろピクニック。「木下水産物株式会社の生まぐろ直売所」と「北郡商店」の自分だけのスペシャルごはん。

お腹が減っては戦はできぬ。旅の始まりはやっぱり美味しいご飯でエネルギーチャージからでしょう。ここ那智勝浦町では、まぐろを買って好きなところで食べるまぐろピクニック、略して「まぐピク」が主流らしい。

 

ということでやってきたのは「株式会社木下水産物株式会社」さんが運営する生まぐろの直売所。採れたてのまぐろがなんと200円で買えると聞いて思わず笑ってしまった。あまりの絶品すぎるねぎとろには「美味しい!」以外の語彙力がどこかに吹っ飛んでしまう。大人気らしく、売り切れは必須。早めの時間帯がおすすめ。

 

その後は北郡商店をはしごしてお惣菜をゲット。どれも安くて美味しそうで目移りしてしまう。手作りのお惣菜がこの値段で買えるなんてあまりにも贅沢だ。
ピクニックに選んだ場所は、真っ青な色が美しいブルービーチ那智。「海が青い」って当たり前なのだけど、ここの海は本当に青い。ぜひその目で確かめてほしい。

 

初めての「まぐピク」が美味しくないわけがなく、心も体も癒された。ねぎトロの味も、肉じゃがコロッケの味も、忘れがたい。


ブルービーチ那智
問い合わせ先 0735-52-5311(那智勝浦町観光案内所)
木下水産物株式会社~生まぐろセルフ販売所~
営業時間 9:00~15:30
休業日 火曜日、土曜日
問い合わせ先 0735-52-0071
北郡商店
営業時間 9:00~18:00
休業日 日曜日、不定休
問い合わせ先 0735-52-0826
熊野の香りを生活へ持ち帰る。本物の木の香りに触れる「maffably(エムアファブリー)」

お腹がいっぱいになり次に訪れたのは、熊野の木々から香りを抽出し、リラクゼーションのプロダクトに落とし込んでいるmaffably(エムアファブリー)さんの店舗。お店の中には馴染みのある杉やヒノキを始め、和歌山ならではの梅や、珍しいクロモジの香りの製品がずらり。どれも天然物にこだわり、本当の木や果実の香りを楽しむことができる。ひとつひとつ香りを確かめていくと、どれもフレッシュで驚いた。「どれも天然ものなので、香りは鮮明ですし、何よりひとつひとつ香りが違うんですよ。その木や葉の個性が香りに出ているので、お気に入りを見つけてくださいね」と教えてくれた。

 

記憶は遠い日の思い出を連れてきてくれる。どれもなんだか何処か懐かしい香りがして、気持ちがふわーっと何処かを彷徨ってしまう。鼻から吸い込んで肺へと通っていく香りが清々しくて、まるで熊野古道で森林浴でもしている気分になった。

 

maffably(エムアファブリー)で使用している木は、許可を受けた森でのみ伐採している。必要なぶんだけ森から分けてもらい、余ったものはその地に戻して栄養へと返す。

 

プロダクトに対する姿勢にも、そのクオリティにも感銘を受けた。


エムアファブリー 熊野の香り
営業時間 10:00~17:00
休業日 火曜日
問い合わせ先 0735-22-0662
自然と一緒に生きてきた歴史を肌で感じる。心身ともに浄化されるアクティビティ「瀞峡めぐり川舟クルーズ」

次に訪れたのは、大自然が生み出した大渓谷「瀞八丁」を舟でまわる「瀞峡めぐり川舟クルーズ」。かつては暮らしの一部として根付いていた和舟を、現在はアクティビティとして体験することができる。自然に意識を集中することができるのも嬉しい。春にはたっぷりの新緑を、秋には紅葉を美しい川の水と、表情豊かな岸壁とともに楽しむことができる。

 

正直乗る前は「涼しくマイナスイオンを感じられれば良いな〜」と軽い気持ちで構えていた。実際に体験してみると、40分の乗船ではでは足りないくらい面白い。
足元を泳いでいく鮎の姿や、岩の間を飛んでいく鳥、さらさらと流れる雲、せせらぎ、体を抜けていく新鮮な空気。

 

船頭さんの話もこれまた興味深い。仕事として関わり始めた頃のことや、どうやってこの舟が人々の生活に根付いていたのかまで、色々な話をしてくれる。つい夢中で話を聞いてしまい、気づけばあっという間にスタート地点に戻ってきてしまった。

 

五感すべてが無理せずに、自然とオープンになる感覚が気持ち良い。間違いなくもう一度やってみたいアクティビティのひとつになった。


瀞峡めぐり川舟クルーズ
出航時間 3月~11月:9:00、10:00、11:00、13:00、14:00、15:00
休業日 月曜日(月曜が祝日の場合は運航、翌日運休) ※川の状況等により運休あり
問い合わせ先 0735-44-0987(熊野川川舟センター)
まあるい味の手作りシロップはきっと忘れられない味になる。「仲氷店」

誰にでも忘れられないお店や味がある。私のいわゆる「思い出の味」は子供の頃プールサイドでよく食べたカップラーメンのカレー味だけれど、きっとこの仲氷店の、ふわふわの氷と手作りシロップが近所にあったのなら間違いなくこれが私の思い出の味だったと思う。「わたしも子供の頃から通ってました」と笑うのはこのお店に案内してくれた地元の女性。

 

こんなまあるくて優しい味のかき氷は初めてだ。それもそのはず、仲氷店の氷は72時間かけてゆっくりと凍らせる良質な “純氷”。スイスイと口に運んで、気づけばふわっとなくなってしまう。小さい子も、おばあちゃんもおじいちゃんも、おしゃれなお姉さんも次々とこの仲氷店に吸い込まれていく。わたしが頼んだのは宇治抹茶ミルクで、もちろん美味しかったのだけど食べているうちに他の人のかき氷に目移りしてしまう。

 

いちごも宇治金時も、ぜんぶ手作り。だからこそ小さな子供にも、安心して食べさせられる。部活の帰りにお小遣いをにぎりしめて寄り道したい店。
近所に住む子が心から羨ましくなった。
 


仲氷店
営業時間 8:00~20:00
休業日 無休
問い合わせ先 0735-21-5300
温泉街には雨がよく似合う。日本最古の湯「湯の峰温泉」
 

午後になると雨が降ってきた。バケツをひっくり返したような大雨だったけれど、それもまたこの湯の峰温泉の雰囲気にぴったり合う。温泉街全体がしっとりとした風に包まれ、優しい灰色の空に温泉の湯気が混じる。「ノスタルジック」という言葉が本当によく似合う。

 

ここ湯の峰温泉は開湯してなんと1800年。日本最古の湯として今も多くのファンが通う。日によってはに7度(!)もお湯の色が変化すると言われる天然温泉「つぼ湯」を筆頭に、古き良き湯の里には良質な温泉や宿が立ち並ぶ。

 

わたしが温泉の他にもうひとつこっそりと楽しみにしていたのが「湯筒」と言う川沿いに作られた温泉で作る温泉ゆで卵。生卵を購入して、90度のお湯の中に入れる。ザーザーと頭の上から聴こえる雨の音をBGMに、スカートをずぶ濡れにしながら真剣に卵と向き合う時間に笑いが込み上げてくる。こんな苦労して作った温泉ゆで卵が美味しくないわけがない。

 

作った温泉ゆで卵を食べながら、街を歩いてみる。
雨の湯の峰温泉は人通りも少なく、なんだか私だけタイムスリップでもしてしまったようだ。
 


湯の峰温泉
問い合わせ先 0735-42-0735(熊野本宮観光協会)
熊野の山々に囲まれる川のほとりの温泉宿「川湯みどりや」

沢山遊んだあとは宿へ。ずっと訪れてみたかった、清流を眺めながら温泉が楽しめる宿「川湯みどりや」さん。お部屋の窓の向こう側には立派な熊野の木々が広がり「良い景色ですねえ」と声をかけると「景観維持のために目の前の森もうちで買い取っているんです」とのこと。世界観へのこだわりが素晴らしくて感動してしまった。

 

お部屋も素敵だけれどわたしが更にはしゃいでしまったのはお料理。鮎の塩焼きやだし巻き玉子まで、何を食べても美味しい。つい何回もおかわりしてしまう。

 

楽しみにしていた川湯みどりやの温泉は、河原から温泉が湧き出る全国でも珍しい天然温泉。源泉をそのまま引いてきた露天風呂。肌にしっとり馴染む上質な泉質がたまらない。
夜は星空を眺めながら、昼は川のせせらぎに耳を澄ませながら。
疲れがお湯に溶けていく感覚を実感する。

 

今回は1泊だけだったけれど、1週間くらいのんびりと心の洗濯がしたくなった。


川湯みどりや
休館日 お問い合わせください
問い合わせ先 0735-42-1011

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