周辺に人の暮らしの気配がなく、立地的にも鉄道以外で向かうことが難しい「秘境駅」。鉄道愛好家・牛山隆信氏の命名であり、ノスタルジーやロマンを感じられる愛すべき駅の総称として、多くの人に知られています。
車窓に中央アルプスや天竜川などの美景を映すJR飯田線にも、しみじみとした趣の秘境駅が点在します。しかし、飯田線には94もの駅があり、全線を走りぬく列車はわずかな数。1日で秘境駅を巡ることは、現実的とはいえません。
秘境駅でも人気の駅を巡れ、駅やその周辺の観光も楽しめるのが、毎年、春と秋を中心に運行される観光列車「急行飯田線秘境駅号」です。2010年に「魅惑の飯田線秘境駅号」(豊橋-天竜峡)として運行が始まり、次第に話題に。リピーターでにぎわい、基本の運行区間も「豊橋-飯田」へと延び、2020年に10周年を迎えました。
飯田線秘境駅号は、2010年のゴールデンウィークより好評だった「飯田線秘境駅探訪ツアー」参加者用の団体臨時列車が「飯田線秘境駅号」として運行されたのが始まりです。これに伴いツアー参加者以外の座席も設けられ、より多くの方が気軽に飯田線の秘境駅を楽しめるようになりました。
2010年春に運行を開始した飯田線秘境駅号は多くの方から好評だったため、秋も継続して運行することができました。飯田線秘境駅号限定デザインのサクマ式ドロップスを発売するなど、秘境駅号オリジナル商品をご用意しました。秘境駅号沿線の駅で販売を行い、秘境駅ファンのお客様へのおもてなしを充実させました。
2017年に、飯田線は全線開通80周年を迎えることができました。豊橋駅での80周年記念出発式の開催や関連するイベントでのノベルティ配布、80周年専用ヘッドマークの掲出や記念きっぷの販売など、飯田線を長らく応援してくださったお客様に向けて、感謝の気持ちを込めた企画を多数用意しました。
飯田線秘境駅号は、2019年にクールジャパンアワードを受賞しました。クールジャパンアワードとは、世界各国の外国人による審査によって、世界が共感する「COOL JAPAN」を発掘・認定し、海外展開につなげていくものです。
天竜川が造った河岸段丘の最上部に位置し、村の中央部を天竜川が蛇行する中川村唯一の鉄道駅。駅の西側では中央アルプスが果樹園越しに姿を現し、牧歌的な雰囲気を楽しめます。
かつて天竜川での砂利の採取と積み込みを行なっていた貨物駅として知られ、その遺構が現在も残ります。飯田盆地の平野部も近く、天竜川の渓谷の幅も広がっています。
「金野駅」は「駅名標に触ると金運が上昇する」とささやかれる駅。森の中の谷合いにあり、一番近い集落までは約3.5km。2018年の1日平均乗車人員は1人にも満たなかったとか。駅に通じる道は、かつて“銀座通り“と呼ばれたそうですが、今その面影はありません。
駅の両側をトンネルに挟まれ、ホームの背後は巨大なコンクリート壁、前方の下側は天竜川が流れる崖という、断崖絶壁の秘境駅。豊橋側の抗口上には長野県泰阜村田本集落に通じる歩道があり、列車を見下ろせる。
平岡ダムの完成によって周辺の集落が水没、居住者が減った結果、秘境駅に。鉄道ファンには難読名の駅としても知られています。秘境駅にしては視界の開けた立地にあり、駅から徒歩約3分のところにあるつり橋「天竜橋」から天竜川と川沿いに建てられた為栗駅の遠景を見ることができます。
ホームから見えるのは、天竜川、その中州の「水神弁天岩」と呼ばれる岩、そしてアーチ橋の「水神橋」。ホームにある、信州でいち早く咲く(例年2月下旬~)といわれるカンザクラも見どころです。 上下線ホームは、今では珍しくなった構内踏切でつながれています。
飯田線の秘境駅では長野県最南端となる駅。切り立った斜面にホームがあります。このあたりはお茶の栽培が盛んで、茶畑の美景も魅力のひとつ。生産希少の独自ブランド「中井侍銘茶」は、生産者ごとに味わいが異なるのだとか。
古色蒼然とした木造駅舎。待合室には、引き上げ式の窓が付いた切符売り場跡が。駅周辺には製茶工場の廃屋に、朽ち果てた三輪自動車……。何十年も時が止まったかのような光景が残っています。駅の所在地は静岡県ですが、駅前を流れる天竜川の対岸は愛知県、天竜川の上流方面は長野県という、珍しい“三県境界駅“としても有名。
秘境駅の中では、かなり新しい駅。1955年の佐久間ダム(浜松市)の建設に伴って開業しました。線路の左右をトンネルに挟まれた、珍しい立地の駅です。
1929年に旧鳳来寺鉄道の停留場として開業したあと、14年後、廃止に。1950年、国鉄(当時)の「柿平駅」として開業。列車本数が多い愛知県内で唯一の秘境駅ランキング200位入り。