#40

町と走り続ける、レールマウンテンバイク

田口 由加子さん レールマウンテンバイク事務局 スタッフ

レールマウンテンバイクとは、廃線後の線路上を自転車で走り抜けるアクティビティ。この新しいスポーツを運営する事務所に勤め、スタッフとして活躍しているのが田口さんです。

  • Q.
    幼い頃から、地元で暮らしているのですか?
    A.
    高校卒業までは、ずっと地元でした。その後は東京の専門学校に進学し、TVなどの音声を調整するエンジニアとして就職しましたが、27歳の時に地元(岐阜県飛騨市神岡町)に戻り現在に至ります。

  • Q.
    地元の雰囲気はいかがですか?
    A.
    地元の神岡町は、昭和中期に栄えた鉱山の町で当時はそれはそれは栄華を誇った町だったという伝説がいくつもあります。現在は採掘も終わり、少子高齢化が進むごく普通の山間の田舎町となっていますが、鉱山の跡地がスーパーカミオカンデで利活用されており、その中では最先端の宇宙物理学の研究が行われているため、町のほとんどの住民が「ニュートリノとは何か?」を語れる不思議な町です。

  • Q.
    田口さんのお気に入りはなんでしょうか?
    A.
    この町ならではの、「レールマウンテンバイクGattan Go!!」!2006年に廃線になった旧神岡鉄道のレールの上を電動アシスト自転車で走る、新感覚!?のサイクリングアクティビティです。仕組みはいたってシンプルで、市販の電動アシスト付き自転車に、特製のガイドフレームをつけてたもの。ペダルをこげば、線路の上をスイスイと走ることができます。

  • Q.
    レールマウンテンバイクは、いつ頃知ったのでしょうか?
    A.
    私がレールマウンテンバイクに関わるきっかけとなったのは、神岡鉄道の廃線直後なので15年ほど前。廃線になる前から線路跡地の利活用を考えていた団体の方に声をかけられ、イベントの手伝いをしたのがきっかけです。最初のイベントでは、この乗り物がお客さまに楽しんでいただけるかどうかスタッフ全員半信半疑でしたが、終わってみれば予想以上にお客さまからの反響が良く、乗り物の開発に費やした時間と苦労が報われました。「続けてやってみれば、案外面白いことになるかも?」という可能性に満ちた発足でしたね。

  • Q.
    どこに惹かれますか?
    A.
    そもそも旧神岡鉄道というのは、鉄道による貨物輸送がトラック輸送へと切り替わり、時代の流れの中でその役目を終えた鉄道です。廃線後は、鉄道の遺構のすべてを限りなくそのままの形でリユースし、レールマウンテンバイクという全く新しい価値観を楽しんでいただける乗り物の拠点に生まれ変わりました。普通、廃線というと地域にとっては、どちらかというとネガティブな寂しいイメージがつきまといますが、この神岡町では廃線直後からの物語が非常にユニークで、波瀾万丈なレールマウンテンバイクのドラマを町のみんなが固唾をのんで見守っていたのです。そして15年も経った今ではすっかり日常の風景となり、定休日と冬季を除いた日にガタガタと走っている。そんな日常がお気に入りです。

  • Q.
    どのようなお客さまが、利用されますか?
    A.
    レールマウンテンバイクに訪れるお客さまは、どちらかというと鉄道ファンではなく、飛騨の自然の中でちょっと変わったサイクリングがしたいというレジャー感覚のお客さまばかり。みなさん真っ暗なトンネルや見晴らしのいい高架橋などを通して、絶え間なく続く“ガタンゴトン”というレールの継ぎ目の振動を体中で体感することにより、線路のゴツさや鉄道の施設の風景をよりリアルに感じ取ることができるでしょう。お客さまの笑顔があふれるレールマウンテンバイクは、今日も現役さながらの“ガタンゴトン”を神岡の町(というか山)に響かせて、元気に走り続けます。

  • Q.
    HC85系のデビューを、個人的にどう思われますか?
    A.
    昔々、高校卒業と同時に東京へでましたが、当時は高速バスも北陸新幹線もなく、特急ひだに乗って故郷から旅立ちました。大きな窓を眺めながら乗り心地のいい座席に座り、(当時はまだあった)ワゴンサービスでアイスクリーム(硬いやつ)を買って、ドキドキしながら「飛騨古川→東京都区内」の切符を握りしめていたのをよく覚えています。飛騨に住む私たちにとっては、特急ひだというと観光ではなく旅立ちのイメージが強く、今HC85系に乗る飛騨の若者がどんな人生の出発をするのだろうと想像します。高山本線は山間を縫うように走るため、それほどスピード感はないですが、ゆっくりゆっくりとカーブを曲がり、長いトンネルを抜けて、そのほとんどが上り坂か下り坂の勾配がつよい、まるで人生のような軌道をピカピカの車両で駆け抜けて若者が都会に向かう。あぁー若いっていいなぁーと、新型の車両なのになぜか旧型(の自分も含めて)を愛おしく思う飛騨のUターン民なのです。

    ※2023年1月時の情報です。

PICK UP

レールマウンテンバイクGattan Go!!

自転車と廃線後の鉄路を組み合わせた新感覚のアトラクション。
列車さながらの「ガタンゴトン」というレールの繋ぎ目の振動と音を体中で感じながら駆け抜けられます。

※撮影時のみマスクを外しています